■ 離れられないのはお互い様
「うぅ……寒い…」
猫のように背を丸めて、幸村は炬燵布団に身を縮こませる。
ぺたりと机に頬をひっつけて丁度良いポジションを確保したらしい幸村は、体制をそのままにぴくりとも動かなくなってしまった。
「いくら寒いからといってそう怠けていては不味いんじゃないか?」
「そういう真田だってちゃっかり炬燵はいってるじゃないか」
だらしなく足を伸ばす幸村とは対照的に真田はきちんと正座をしたままだ。
「足痺れないの?」
「慣れているから平気だ」
「俺だったら一分ぐらいで痺れちゃうや」
幸村が足先で真田の膝小僧をつついてくるが真田はそれを気にすることなく炬燵の上に置いてある蜜柑に手をのばす。
「俺の分もついでに剥いてよ」
「それぐらい自分でせんか」
「ひとつもふたつも変わらないって」
「我が儘を云うな、」
え―、と文句を言いながらも幸村は蜜柑を取ると黙々と剥き始める。
「真田は筋とるタイプ?」
「面倒だから俺はそのまま食べる」
「俺も、」
それっきり会話は途切れ、二人は黙したまま蜜柑を頬張る。
「蜜柑、美味しいね」
「あぁ、」
そのまま炬燵で寝てしまった幸村の上にそっと毛布をかけて、真田は小さく息を漏らした。
end.
2012/1/27
2012/9/30 加筆修正
御題はAコース様より
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