■ 痛みと愛は反比例

「歯科検診の結果みせんしゃい」
「やだ」
「なんで」
「だってぜってぇ仁王怒るもん」
「いいから渡す」
「う―…」

 渋々といった風にブン太は一枚の紙を取り出し、おそるおそる仁王に渡した。

「虫歯…あった……」
「いっつも甘いもんばっか食べとるからじゃあほ」

 鞄かしんしゃい、と仁王が手を出すが、ブン太はなかなか差しだそうとはしない。

「おかし没収じゃ」
「……やだ、」

 仁王は意地でも渡すものかと鞄を抱えるブン太を可愛いな、と思いつつもじりじりとブン太に近付いていく。

「ぜ、ぜったいに食べないって約束する!」
「…とか言ってこっそり食べるんが目に見えとるから没収するんじゃ。観念しんしゃい」

 なおも抵抗を続けるブン太にしびれをきらした仁王は一気にブン太との距離をつめ、唇を奪う。

「!?」
「すきありじゃ」

 ブン太がほんの一瞬力を抜いた隙に仁王がブン太の鞄を取り上げる。

「あっきたね―ぞ仁王!!」
「大人しく引き渡さんかったから実力行使しただけじゃ」
「なんかそれ、俺よりおまえが強いみたいで腹立つ」
「実際ブンちゃんは俺にかてんよ」
「そんなこと…っ、ん、ん―っ!」

 再び唇を塞がれ、ブン太の台詞が途切れる。

「ほ―ら、ちゅ―しただけで抵抗できんくなるき」
「……っ!」

 言い返す術もなく仁王に言いくるめられて、ブン太は悔しさに最後の抵抗とばかりに仁王をにらみあげる。

「……ていうか、虫歯ってうつらんよな?」
「俺そんなことしらねぇし、つかむしろうつれ」


 頬を膨らませたブン太は虫歯菌をうつすためもう一度仁王の唇に顔をよせたが見事に阻止され、改めて力の差を見せ付けられるのだった。



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2012/8/8


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