■ それは生きる毒のようだ

「参謀のあほ!わからずや!」

 昼休み。仁王がはりあげたその声に一瞬教室が静まり返る。

「……あまり大声を出すな、困るのはおまえだぞ?」
「そうやっておまんはいっつも一人だけ余裕なんじゃ!好かんなら好かんではっきり言えば俺だって……っ」

 今にも泣き出しそうな仁王に、柳は腹の底から冷えるような低い声で返事を返す。

「おまえは勘違いをしている……わかるか?」
「そんなんわからんき…ッ!」
「……なら、教えてやる」

 思い切り顎をつかまれ、顔を引き寄せられる。
 そしてそのまま唇を重ねられた。
 触れるにとどまらず舌を絡められ、仁王はされるがままに目を閉じる。
 同時に静まり返る教室。皆の視線が一斉に二人に向いた。

「……っは、…」
「もうこの際牽制をかねて俺たちの関係を公にしても構わないだろう?」

 今さらそんなことを言ったところで、目撃者は不特定多数のクラスメートたち。口止めなんてできる数じゃない。

「参謀のあほ」
「おまえが不安にならずとも俺はおまえ以上に好きだよ…雅治」


 延々といちゃつき続ける二人に呆れたブン太が止めに入り、二人が姿を消してもなお教室内の静寂は保たれたままなのであった。



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2012/7/31
御題は魔女のおはなし様より


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