■ つまらぬ妄想より
「ブンちゃんこれ」
目の前にさしだされたのは、どこからどうみてもメイド服そのものだ。
「いやいやいや、意味わかんねぇし」
要するにこれを着ろ、ということらしいがブン太はひらひらふわふわの服を着る趣味はないし何よりスカート丈がおそろしいほど短い。もはや脅威的ともいえるその丈はいうならば風が吹けばパンツが軽く見えるくらいの短さ、といえば誰もが理解してくれるだろう。それぐらい短い。
「だめ?」
「もちろん却下」
ええ―と不満の声を漏らす仁王はまだ諦めがついていないらしく片手にもったメイド服を離そうとしない。
「だめなもんはだめ、俺はぜってぇ着ねぇから!」
「……こうなれば奥の手じゃっ」
「は?奥の手?……ってちょっ…!」
仁王のいう奥の手とはつまり簡単にいえば強行突破である。
ブン太は必死の抵抗も虚しくあっさりと仁王に組み敷かれあっと言う間に身ぐるみをはがされてしまった。
「きたねぇぞ仁王!力押しなんて!」
「憎むんなら女の子に生まれた自分を憎むんじゃな」
「さいって―っ!」
「なんとでもいいんしゃい。ブンちゃんのメイド服姿をカメラにおさめるんが俺の仕事やき」
そう言うやいなやどこから取り出したのか、仁王は片手にカメラをかまえた。
「い―や―だ―ッ!!」
メイド服を着せられた挙げ句散々シャッターをきられたブン太は余りの羞恥に顔を真っ赤にして仁王を睨み付ける。
逆にそれは仁王を煽るだけに終わるのだが……その後はご想像におまかせということで。
その後デジカメのデータを仁王が幸村に渡しに行ったのだが、ブン太は事の裏幕の存在を未だに知らない。
-----
2012/7/31
御題は魔女のおはなし様より
[
prev /
next ]
167/303