■ 純白の囚われびと

「……なん…これ、」

 下駄箱を開けて、その目の前。上履きの上にのせられた写真と、一枚の手紙。
 それは仁王が自慰をしている真っ最中の写真で、手紙にはお決まりの文句が。

『これを撒かれたくなかったら放課後、視聴覚室までこい』

 朝一番から嫌なものを見てしまった。自慰ぐらい誰でもするだろうに、なんで俺だけ。そんなことを思いつつも、やはり撒かれるのは困る。ただでさえ生徒指導部に目をつけられているというのに、これ以上厄介事が増えるのは御免だ。

「いけばいいんじゃろ、いけば」

 輪姦(まわ)されるか、それともリンチされるか。どちらにせよ無傷で終わる可能性は限り無くゼロに近い。女を抱くならまだしも、見ず知らずの男に抱かれるのは正直嫌だ。そもそも、進んで同性に抱かれにいくなんてことを常人はしないだろう。
 といいつつも、気持ちがよければ仁王は男だろうが女だろうが別段どちらでもいい。世間体的によろしくないから体よく繕っているだけで、誘われれば容易に足は開く。
 赤の他人に醜態を晒すなんてことは、けして好まないけれど。

「あ―、きたきた」

 視聴覚に入ると、一斉に視線が仁王に降り注いだ。

「どうだったあの写真、うまく撮れてたでしょ?」

 下卑た笑いが響く。ああ、気分は最悪だ。

「たぶん言わなくてもわかってると思うけど。……制服全部脱いで」

 リーダー格らしい細身のやつが、にっこりと笑いながらそう言った。
 下手に抵抗するよりも素直に従う方が無難であることはわかりきっているので仁王はネクタイをゆるめ、さっさと制服を脱ぎ捨てていく。

「四つん這いになって、」

 言われるがままに指示に従う。はやく終われ、と心の中で念じながら。

「こんなコトしてるって柳が知ったら、どう思うだろうね」
「!」

 リーダー格がにい、と笑った。

「柳と付き合ってるんだろう?体の関係も、勿論」
「…ゃ、言わんで!柳には言わんで、お願い…っなんでもいうこときくから、ッ」

 仁王の背中を、えもいわれぬ恐怖がかけあがっていく。

「そう……その顔が見たかったんだ」


 じゃあ今からたっぷり楽しもうね、といって、男は仁王の怯えた瞳の上に口付けた。



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2012/7/11
御題はたとえば僕が様より


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