■ 気紛れなら、さいごまでそうでいて

 好きでもない相手とキスするなんて、やっぱり間違ってる。

 ブン太はたった今唇を重ねている仁王の顔を見つめながら、ふいにそう思った。
 ほんの遊び半分でキスをしてからというもの、仁王とブン太は時折こうやって意味もなく口付けをかわしているのだ。

「な、仁王」
「な―に、ブンちゃん」
「あのさ、」
「ん?」
「仁王は俺のこと好きなの?」

 仁王が驚いた顔でブン太を見つめる。

「ブンちゃんは俺んことが好きじゃないん?」
「ん―。わかんねぇ、けど」

 でも、仁王とキスするのは好き、気持ちいいから。そうブン太が言うと、また仁王が唇を重ねてきた。

「言っとらんかったけど、俺。ブンちゃんのこと好きやから、だからキスしてるんよ」
「そんなのぜんぜん知らなかったし、つかそれ初耳だし」
「まじで?」
「うん、まじで」

 唖然とする仁王の頬をぺちぺちとたたけば仁王がはっと我に返って、もう一度ブン太の瞳をじいっと覗き込んだ。

「じゃあ、今からすきんなって、俺んこと」
「……別にいいけどさ」

 本当に今さらすぎるし、とか思ったけれど、何故か胸の高鳴りは抑えきれなかった。



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2012/7/6
御題は魔女のおはなし様より


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