■ 私がお仕置きしてあげる

「どういうつもりなの?」

 どういうつもり、と聞かれてもどうもこうもない。
 空き教室に呼び出されて、四、五人のクラスメートに取り囲まれて。突然そんなことを言われてもどうにも答えようがないではないか。

「言ってる意味がようわからんのじゃけど」
「しらばっくれんじゃねぇよブス!」

 思い切り突き飛ばされて、背中に衝撃が走る。

「おまえ私の男に手ぇだしただろ!」
「……あぁ、あれ」

 クラスメートは女とは思えない形相で仁王を睨み付ける。

「あんた一体なにしたかわかってんの?人の男たぶらかしといて生意気な面さらしてんじゃねぇよ!!」

 思い切り顔面をぶたれて、口の端がきれたのかたらりと血が一筋たれる。

「たぶらかしたんじゃのうて、勝手に向こうから誘ってきただけじゃ。私にあたるのは筋違いじゃき。……どうせ魅力のないおまえさんに愛想つかしたんじゃろ」

 ああ、完全にリンチされるな、と頭の隅で思った。まあ煽ったのは仁王だし、女子のリンチなんてたかがしれているから別に構わないか、と。

 もう一度顔面か、もしくは鳩尾にくるであろう打撃に軽く目を閉じた。が、予想に反して痛みは訪れず、代わりに息を飲む音が。

「こんなところで何をしている。下校時間はとっくに過ぎているはずだが」

 腕時計に目をやりながら、柳が静かに呟くように言った。
 柳が薄く開眼してクラスメートらを見据えれば、彼女たちは怯えたように目を伏せる。

「……くっ、覚えてろよ仁王」

 ばたばたばた、と廊下をかけていく音が響いて、しばらくして沈黙がその場を支配した。

「……何しにきたん」
「別に、教室の見回りをしていただけさ」
「ふ―ん、」

 仁王が教室を出ていこうとしたら、案の定柳が仁王の行く手を阻んだ。

「なん、柳」
「他の男と遊ぶなんて、どういうつもりだ仁王?」
「……もしかして、最初から、」
「勿論、聞かせてもらった」

 たん、と柳の手が壁をついて、無理矢理口付けられた。

「悪い子にはお仕置きだ」



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2012/7/5
御題は魔女のおはなし様より


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