■ 銃声にこめた意味を君はまだ知らない

※マフィアパラレル


「それにしても、ターゲット一人に四人がかりというのは些か慎重すぎやしませんか……?」
「そういうてものぉ……首領の命令じゃき、どうしようもないぜよ」
「仁王の言う通りだ柳生。今回のターゲットはなかなかに厄介らしいからな、保険をかける意味でも人数が多いにこしたことはない」

 廊下を歩きながら柳生、仁王、柳、そして真田の四人はそれぞれの思索に耽りつつ思い思いのことを口にしていた。

 先ほど四人は首領である幸村からとあるターゲットより情報を入手次第始末せよ、との命令を下されたのだ。

「まあ柳生のいうと―り慎重すぎるとは思うき、」
「ですよね!」
「……文句があるのは一向に構わないが命令には素直に従え。…あまり我が儘ばかり言っていると首領に告げ口するぞ?」
「…それはちょっと……」
「勘弁じゃき、」

 わかればいい、と柳が言ったところで後ろにいた真田がようやく口を開く。

「つべこべ言っとらんとさっさと行くぞ。各々の得物の整備も必要だろう」

 わかりました、と言ってはいるけれども柳生はまだ任務内容に不満が隠しきれないらしく終始ぶつぶつと文句を漏らしていたが、真田にひと睨みされて最終的には渋々といった感じに口を噤んだ。

「ターゲットを仕留めるまでの行程はいつも通り参謀に頼んでええんじゃな?」
「ああ、既に大体の動きは出来ているから後ほど伝えるよ」
「確か今週までに片付ければいいんですよね?」
「期限は今週中だが今回は心持ち早めに任務を終える予定だ。真田もいるしな」
「了―解」
「ところで、真田くんがこのような任務に配属されるのは初めてではないですか?」
「元から真田は戦闘要員ではないからの」
「真田を今回の任務にいれたのは首領直々のお達しがあったからだ。正直俺にも理由は分からない」
「足を引っ張るような真似はせんから安心しろ。あくまで俺は密偵、表立った戦闘には参加しない」
「いつもは俺がやっている仕事を真田に任せることになっている」
「ではまず真田くんがターゲットの近辺を洗う、ということですね?」
「弦一郎の情報収集能力に関しては誰も右に出る者はいないからな。まずは真田を内部に潜り込ませてターゲット宅の見取り図等を作ってもらう。あとはそれぞれの得意分野で尽力してくれたならば今回も容易に完遂できるはずだ」
「ですが万が一戦闘にでもなったらどうします?聞くところによれば真田くんは戦闘はからっきしだそうじゃないですか」
「ああ、そこは俺が援護するから心配ない。全く闘えないわけではないし、銃器が取り扱えないだけで体術はファミリーの中で一、二を争う」
「いくら体術ができたとしても銃弾には太刀打ちできませんよ。……本当に大丈夫なんですか?」
「柳生は心配性じゃのう……柳が立てた計画が失敗したことなんて今までにあったか?」
「ないです…けど、」
「なら今は柳と真田を信じんしゃい」

「……わかりました」



**


 事は思いの外順調に進み、目的の情報も入手してあとはターゲットの始末のみとなった。
 ターゲットのファミリーに扮し柳と真田が先に乗り込む。そしてその後に柳生と仁王が続くという手筈になっていた。
 勿論首領の部屋の位置はすでに把握済みだ。あくまで今回も堂々と潜入をはかる。
 初めは二人で一気に片を付ける予定だったがやはり二人一緒に行動するのは少々危険だということで柳が単独で室内に突入し、ターゲットを仕留めることになった。

「真田はここで待機をしておいてくれ。緊急時にはこれを、」

 真田が銃器の類が扱えないことは知っていたが、何も無いよりかは何かしら武器が有るほうがまだましだろう。対峙した人間への威嚇や牽制にも利用できるはずだ。

「あまり無茶はするな、蓮二」
「言われなくともわかっているさ」

 そうして柳が勢い良く目的の部屋の扉を開け放つ。首領がいるであろう場所に照準を定め、引き金を引いた。

 ドォン、と屋敷内に銃声が響くが、柳の目の前には硝煙をあげる真っ白な壁が広がっているだけで。

「……いない?」

 そう、部屋はすでにもぬけのからで、代わりといってはあまりにも陳腐だがわざとらしく机の上に書き置きが置いてあった。


“真田クンは預からせてもらうわ

返してほしかったら…わかってるよな、柳クン?”


 柳は思わず奥歯を噛み締める。


―……してやられた!


 全てはターゲット…――白石蔵ノ介の術中であったという事実にようやく気付き、柳はそのまま全力疾走で部屋を飛び出した。







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