■ 探し物は何処へ

 赤也から電話がかかってきたのは待ち合わせ時間の十五分前ぐらいで、受話器ごしの赤也は心無しか焦っているような気がした。
「どうした?」
「ど、どうしましょう柳先輩ッ!俺定期券なくしちゃったっぽくて…先月更新したばっかなのに―…」
 どうやら赤也は定期券を無くしてまだ家から出れていないようだ。今の様子では待ち合わせの時間には確実に間に合わないだろう。赤也が遅刻するのはよくあることなので特に気にはしないが、テンパると赤也は周りが見えなくなるのでそのまま勢いあまってケガでもするのではないかと内心気が気でない。
「赤也、一度落ち着いて。最後に定期券を使ったのはいつかゆっくりと思い出してみろ」
 柳の声を聞いて少し安心したらしい、落ち着いた声で赤也が説明を始める。
「えっと、昨日学校行った帰りに使って……」
「その後、どこにしまったんだ?」
「カバンのポケットにしまって、」
「ポケットの中は確認したか?」
「したっス」
「…では学校の最寄り駅以外の駅で定期券を使った覚えは?」
「き、昨日友達とゲーセン行って…でそこで使って……あ!!」
「どうだ、思い出せたか」
「俺改札出るときに友達にたまたまカバン持っててもらってたからズボンのポケットに……」
 受話器ごしにあった!と興奮気味の赤也の声が聞こえて柳はにっこりと微笑む。
「見つかってなによりだ。慌てなくてもいいから、気を付けてくるんだぞ」

「はいっ!」





(見つかってなにより)

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管理人の実話です(笑)


2012/4/1

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