■ 夢のような

 幸村たちと次回の期末テストについて話している内につい夢中になってしまい、赤也と一緒に帰る約束をうっかり忘れてしまっていた。
「……三十分遅刻、」
 待ち合わせていた校門に急いで行くと、ふてくされた顔の赤也が恨めしげにこちらを見ているのが見えた。
「すまない赤也、」
 赤也の様子をみるに機嫌をなおしてくれそうな気配は微塵もない。むしろ悪化しているような気さえもする。
「…お詫びになんかしてくださいよ」
「ああ、なんでもひとついうことをきこう」
 なんでも、というのは少々制約がなさすぎるな、と思い返してただし…と言葉を続けようとしたところで赤也に先をこされる。
「なんでもひとつ、……男に二言はないっすからね」
 しまった、と今更ながらに後悔するが赤也の言うとおり、男に二言はない。悪いのは柳であるし、ここは素直に赤也のいうことをきこう。
「それで、何をすれば……」
「俺んち、きてくださいよ。今から」
「……ああ、いいだろう」

 赤也の家に行くのは初めてではなかったがこんな時間から行くのは初のことだった。
「明日休みですし、泊まってくださいよ。ね?」
「しかし急にお邪魔してはご両親が…」
「柳先輩。なんでも、って。言いましたよね?」

***

 されるがままに赤也にベッドに押し倒されて流れに身を任せていたらいつの間にか朝になっていた。
 鈍痛を訴える腰をさすりながらベッドから体を起こせば、昨夜のことが嘘のように思えてくるほどに無防備な寝顔をさらした赤也が目に入った。
「……好きだ、」
 四方八方に伸び放題の前髪をなでながら柳が微笑めば、小さなうめき声と共に赤也がゆっくりと瞼をあげる。
「柳せんぱい…いまなんじっすか?」
「六時過ぎだが?」
「じゃあまだこうしていられますね」
 ぎゅう、と抱き締められて、柳は赤面する。
「せんぱい、かわいい」
「可愛くなんて…」
「柳先輩は可愛いっすよ、いい加減自覚してくださいっ」
 ついばむみたいにキスをされて、柳の思考はどろどろに溶かされていく。

「先輩、俺もう怒ってませんから」
「知っている」
「嘘、知ってたらあんな不安そうな顔しませんよ」
「……赤也は最近嫌な方向に成長してきて困るな、」





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2012/3/31
御題は邂逅と輪廻様より

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