■ どんなことがあっても、きっと君を見つけるから
また仁王くんがどこかに行ってしまった。
授業もサボったようで、仕方なく柳生は仁王の捜索に駆り出される。次の授業の小テストの勉強だってしたいのに、貴重な間休みが削られてしまうのだ。
「まったく…探すこちらの身にもなってほしいものです」
仁王がどこにいくかなんて経験上大体把握していて、空き教室とトイレを回り終わった柳生は迷うことなく屋上に向かった。
「仁王くん!」
「うおっ…なんじゃ柳生か、びっくりしたぜよ」
「もうすぐで授業が始まるんですから、はやく教室に戻りますよ」
「え―」
「え―じゃないです」
「次古典やから受けたくないき」
「高い学費を払っていただいている親御さんに申し訳がたたないでしょう」
「う―」
渋々、といった感じに仁王はのそのそと立ち上がる。さあはやく、と柳生に手を差し出されて、仁王はにいっと笑みを深めた。
仁王は柳生の腕を掴むと、勢いにまかせてそのままコンクリートの上に倒れ込んだ。
「ちょっと仁王くんどういうつもりですかっ」
「俺がそんな素直に柳生のいうこときくわけないじゃろ」
「騙したんですか!」
「ひっかかった柳生がわるいき」
じたばたと暴れる柳生を押さえつけて仁王は上唇をぺろりとなめあげた。
「ミイラ取りがミイラに、ていうじゃろ?」
(どんなことがあっても、きっと君を見つけるから)
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2012/6/3
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