■ 甘い誘惑

「やぎゅ、ちゅーしよ」

 仁王が柳生に唇を寄せれば面食らった顔の柳生が慌てて仁王の腕を掴んだ。
「きゅ、急にそんなこと言わないでください……っ」
 照れてる照れてる、と軽く揶揄れば赤面した柳生に睨まれてしまった。
 柳生は不意打ちに弱い。キスするのも、手を繋ぐのでさえあらかじめ予告しないとすぐに狼狽えてしまう。
「じゃあ十数えるから、数えおわったらしていいかの?」
「嫌だと言っても、あなたはするでしょう?」
「ようわかっとるな、柳生は」
 柳生は浅く溜め息を吐き出すとゆっくりと目を閉じる。
「い―ち、」
 仁王の声が耳元で聞こえる度に柳生の心拍数が徐々にあがっていく。
「きゅう、」
 耳元に感じていた吐息が口元に移る。
 じゅう、と言ったと同時に唇が重なった。

 柳生の唇は心なしか甘い。
 溺れるのには、十分だった。



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2012/3/29
御題は邂逅と輪廻様より

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