■ 甘いそれは中毒か依存のようで



 仁王君にぐい、と顔を引き寄せられたかと思うと口に何かを押し込まれました。舌の上に広がった甘い味がそれが飴玉であることを認識させます。
「いちご味じゃ」
 通常より二周りは大きいと思われる飴玉は口の中の面積を当然ながら小さくします。私が飴玉に苦戦している隙に仁王君の腕は私の首に回されて唇が重なりました。触れるだけの軽いキスを繰り返して、仁王君は悪戯っぽく微笑んでみせます。
 しかしそれより先をしようにもいつものような深いキスは飴玉が邪魔でできません。
 私がなんとか飴玉を小さくしようと舐めていると仁王君が何を思ったのか私の下唇を舐めたかと思いきやそのまま舌を滑り込ませてきました。ただでさえ飴玉でいっぱいの口が仁王君によってさらに満たされます。
 舌の上に転がしていた飴玉に仁王君の舌も絡んで、さらに私の舌も絡めとります。飴玉は私と仁王君の舌をすり抜けて仁王君の口へと転がっていきました。
「…ん……ふ…ぁ、…」
 くぐもった声がもれて、思わず口元をおさえます。口周りは互いの唾液に濡れてべとべとです。
「もう…どういうつもりですか仁王君!」
「甘いじゃろ?」
「……ええ、そうですけど」
 きっと仁王君の行動に意味なんてありません。たまたま仁王君が飴玉を所持していて、たまたま私がいたから今の行動に至ったのでしょう。
 彼の行動の大半は興味本位と思い付きに占められています。
「柳生、いちご味じゃ」
「飴を食べたのだから当たり前でしょう」

 ぺろりと唇を舐める仕草がなんとなく妖艶で、私は思わず頬を赤らめてしまいました。

「もっかいする?」
「……はい」

 毒されているとは、まさにこのことです。





-----
2012/3/28
御題は邂逅と輪廻様より

[ prev / next ]

267/303
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -