■ 優しい本音が見え隠れ

 形良く整えられた爪が仁王の手のひらをゆっくりとなぞっていった。

「仁王くんの手、綺麗ですね」

 壊れ物を扱うみたいな仕草で仁王の手のひらを行ったり来たりしていた柳生の指が、ふいに止まる。

「柳生の方が綺麗じゃき」

 それに応えるようにもう片方の手をとって、仁王が柳生の手の甲に唇を落とした。

「まるで御伽噺のお姫様みたいですね」

 照れたように笑う柳生が可愛くて、仁王はつい出来心で柳生の指に舌を這わす。

「ちょっと、仁王くん……!?」

 指と指の間を縫っていく舌先に柳生の顔はみるみるまに赤く染まっていく。

「柳生は指弱いき、」
「し、知ってるならやらないでください!」
「嫌じゃ」

 仁王の舌づかいは巧みだ。それはキスにおいても言えることであるし、このような状況でも当然発揮される。

「……っ、ゃ……ッ」

 いよいよ柳生の目尻に涙がたまってくると、仁王は慌てて舌を離す。

「そんな顔せんとって柳生、俺が悪かったき、泣かんで」
「な、泣いてませんよ…!」

 そう言いつつ手を振り払わない柳生はやはり仁王のことが好きで、仁王も柳生から離れられないほどに好いていることを改めて自覚するのだ。





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2012/3/10
御題Discolo様より

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