■ そうやって何もかも奪っていくのか
※ブン太女体化
体育の後の教室はにわかに騒がしい。
グラウンドで散々動き回った体は疲労に浸かり、汗で体中はべたべたで酷く気持ち悪い。
「うぁ―あつすぎるだろぃ―」
机にへばりつきながらそう言って溜め息を吐くブン太は首筋を伝う汗をふきながら不満そうに頬を膨らませた。
天候の類にとやかく文句をつけたところでどうにもならないのは明確であるのに、と仁王は思うがきっと口に出せば殴られるので今は黙っておくことにした。
開け放たれた窓から吹き込む生温い風が頬をなで上げ、正直気分は最悪だった。暑いし、眠たいし、授業はつまらないし。いっそのことこのままサボってやろうかとも思うが今更教室を出ていくのも面倒くさい。
「ブンちゃ―ん」
「ん?なに?」
丁度後ろの席からブン太をつんつん、とつつくとブン太が振り向く。
「なんか暇つぶせるもんもっとらん?」
「あ、ワンピの最新刊なら」
「かして」
「ん―…ちょい待って……」
(あ、)
鞄をごそごそと漁り始めるブン太の背中を見つめながら、ふと仁王は気付いてしまった。
(下着、すけちょる……)
さっきの体育でかいた汗のせいでブン太のブラが薄いワイシャツから透けて見えているのだ。
勿論本人は気付いておらず、仁王は柄にもなく狼狽える。
今日のブラはピンク地に水玉。そういえば前スカートをめくった時にはいていたパンツも水玉だったな、なんて頭の隅で考えながら仁王は鼻の奥がつん、とする独特の感覚をおぼえた。
(やば……っ)
仁王はとっさに鼻の頭をおさえて、流れ出る血を止めようと躍起になる。
ばたばたと後ろで奮闘する仁王にも気付かず、ブン太がはい、と漫画を手渡してきてさらには不思議そうな顔をしてどうしかした?なんて聞いてくるものだから今度こそ耐えきれなくなって指の間から垂れる鼻血に本気で死にたくなった。
(あ―…めっちゃ触りたい揉みたい…ブンちゃんのおっぱいおっきいし、柔らかそうやし、)
仁王はそこまで考えて、ついには授業中なんてこともかえりみずトイレに向かって走り出した。
「煽ったブンちゃんが悪いんじゃ!」
そうやって何もかも奪っていくのか
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2012/6/6
御題は自惚れてんじゃねぇよ様より
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