■ 取らないで、奪わないで、俺のものだよ

 真田がまた他クラスの女子から告白を受けたらしい。

 学校という空間は色恋沙汰についての噂が広まるのが他に比べ異常に速い。誰がフラれただとか誰と誰が付き合っているだとか、そういった類の話は男女問わず好まれるのが世の常であるらしい。
 ちなみに余談ではあるが真田も幸村も一般男子の中ではもてる、という区分に配属されている。真田は周りから老け顔だの堅物だのと散々言われているわりには案外女子からの人気が高いのだ。
 男気あふれるというか、誰に対しても態度を変えないそんなところが女子達の心を射止めているのだろう。本人が自覚している様子はないのだが、幸村は自分のことは棚に上げつつそれが不満だった。
 よくよく考えてみれば真田は一カ月に一度ぐらいの割合で告白を受けているし、密かにファンクラブなんてものまで存在してるらしい。
 真田は俺のものなのに、とちょっとした独占欲がほんの少し芽を出す。真田の前でそんな素振りはけして見せないけれど。
「で、なんて返事するの?」
「……まだおまえにその事を言った覚えはないが」
「C組は今おまえの話で持ち切り。さっきC組の女の子たちが話しているのを小耳にはさんだんだよ」
「………」
 答えなんてわざわざ聞かずとも真田がどう返事するのかどうかなんて最初からわかっている。またいつものように丁重に断るのだろうと、流石にそれぐらいの察しはつく。
 けれどふと、幸村は自分にとっての最悪の事態を考えてしまうのだ。

――真田がもし、他の誰かと付き合うことになったら、

 そうしたら幸村はきっと真田と一緒にいられなくなる。
 誰かのものになった真田の隣にいるなんて、耐えられるはずがない。
「ね、真田はさ。女の子とかに興味ないの?」
「突然何を言い出すかと思えば…」
「いいから。興味あるのか、ないのか」
 幸村が真剣な眼差しを向ければ、少々気圧されつつも真田は口を開いた。
「……俺はおまえという支えがいるから、女子になんぞに頼らんでも平気だ」
 思わぬ真田の返しに幸村は思わず赤面するがそれも一瞬のことで、すぐにいつもの表情に戻った。
「それで、告白の返事。どうするの?」
 幸村が一番聞きたかった質問を投げかける。声が震えていなかったことに、内心ほっとしながら。
「彼女には悪いが断らせてもらう。恋愛に現を抜かして部活に支障が出ては困るからな」
「……ふぅん、」
 まるで興味がないといった風に返事を返す幸村だったが、正直内心では安堵の息を漏らしていた。

――真田はずっと俺の隣にいてくれるんだ、

 これじゃあまるで俺が真田に片思いしてるみたいだ、なんて。
 実際、相違ないのかもしれないけれど。暫くは、このままで。


(俺は誰にも染まらないおまえに恋をしているんだよ、きっと)



End.
2012/9/30 加筆修正
title by 自惚れてんじゃねぇよ

[ prev / next ]

1/303
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -