■ I'll do the rest.
「序盤は上々ってか」
たん、と地面に降り立ち密書を懐に仕舞うと三郎は満足げに肩を鳴らす。
「まだまだ油断は禁物だよ三郎、」
辺りを警戒しつつ遅れて雷蔵も三郎の後に続く。
「後は学園にこれを届けるなんだが…後ろから気配が―…多分三つか四つあるから、それを振り切れば忍務は完遂だ」
背後をちらりと見やり三郎が小さく舌なめずりをしてみせる。
「それじゃあ此処でのんびり油売ってる場合じゃないじゃないか!?」
「どっちにしろ逃げ切れやしないさ。なんだって相手はプロだからな」
雷蔵が駆け出そうとした矢先、行く手を阻む黒い影が現る。
「大人しくそれを渡してもらおうか」
追っ手と思しき影がじりじりと間合いを詰めてくる。余りの事態にパニックに陥りかける雷蔵の肩を掴み三郎は周りに聞こえないであろう声量で小さく「大丈夫だ」と嘯いた。
「や―だね」
刹那目前を突っ切る苦無。はらりと髪が散る。
「―……!!」
なんとか一撃を避けるが次々と飛び交う乱撃に体が追い付かない。
「……くっ…」
後ろに体をそらし足をバネに大きく飛躍。相手の攻撃をかわしつつ此方も負けじと苦無を投げつけるが上手く軌道が定まらず致命傷にはいたらない。
「雷蔵!雷蔵は先に行ってくれ、私は後から追うからっ!!」
一人二人と追っ手を薙ぎ倒しながら三郎は声を張り上げる。
「無茶だよ三郎!この人数相手で…」
「いいからはやくいけ!!」
一瞬躊躇いを見せた雷蔵はもつれる足を叱咤し、三郎を一瞥するとそのまま振り返ることなく走り出す。
「待て……!」「おっと、」
「こっから先は通せないな」
I'll do the rest.
(あとは私に任せて)
end.
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鉢+雷の忍務話でした!三郎に「おれのことはいいからおまえははやく先に行け!」みたいな台詞を言わせたかったんです。
御題は
空橙様より
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