■ 君の瞳の中には

 じりじりと痛む、胸の高鳴り。
 恋しくて、触れたくて、何度も手を伸ばすけれど、すんでのところでいつも理性が邪魔をする。
 伊作は大きく溜め息を吐き出して、その場でがくりとうなだれた。
 級友に恋心を抱くなど、そんなことがあってなるものか。
 そう思う反面、確実に大きくなる恋心に伊作自身気付かないふりをするのにも限界が訪れようとしていた。
 そうやってあやふやなそれを持て余しながら、伊作は何度も何度も頻りに溜め息を垂れ流すのだ。

「どうした伊作、また実習の単位でもおとしたか」

 突然後ろから声をかけられ驚いて振り返ってみれば、委員会の帰りらしい仙蔵が僅かにはにかみながら伊作を見据えていた。

 君のことを考えてた、なんていえるはずもなく、なんとかはぐらかそうと口を開くが上手く言葉が出てこない。

「…伊作?」

 今すぐにでもその肢体を掻き抱きたいという衝動と反動、そして抑圧。

――本当は、本当は、仙蔵が―……

 何故この先が云えない。


「少し立ち眩みしただけだから、気にしないで」

 己の感情に偽りを重ねて、もう一度鍵をかける。

 もう二度とあふれてしまわないように。

 張り裂けそうな恋情、恋慕。
 君の笑顔で溶かしてしまいたい。


end.
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伊作、ヤンデレ化。

御題はDiscolo様より

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