■ 想い、届くことなく消えて
見覚えのある後ろ姿が目に入るなり、伊作は無意識に苦無を振りかざしていた。
「…伊作か、」
「ああ、久し振りだね」
喉笛を的確に狙った軌道は逸れ、月明かりに反射した苦無が地面に深々と突き刺さる。
「折角の再会だと云うのに、こう月明かりに照らされていては台無しだな」
「何故?この方が僕は好きだけれど」
だって、と伊作は続ける。
「血は月明かりに照らされると、とても綺麗なんだよ?」
成る程、誰の者かしれない血飛沫が伊作の頬によくはえている。
「このまま月明かりが私達の影を消してしまえばいいのにね」
言葉の真義は窺えぬまま、意識は闇に呑まれた。
end.
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この後仙蔵が死ぬ描写も書こうと思ってたんですけど誰得なので削りました(笑)
卒業後忍務中に敵同士としてばったり再会したってなんて不運。
御題は 輝く空に向日葵の愛を 様より
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