■ この身体、朽ち果てるまで

 まるで地獄絵図だと、そう思った。

 血と硝煙の臭いで麻痺した鼻腔は最早機能を果たさず、然しそれがせめてもの救いとばかりに辺りには次々と血が飛び散っていた。
「……ぁああ―…ぁ、」
 吐き出すものはもう尽きたのか、口端からたらりと胃液が伝う。
 目前の死を目の当たりにしながら平静を装う自分は一体何であるというのだろうか。
 神や仏と敬うより先、畏怖とか不気味さだとかそんなものに覆い隠されてしまう慈愛。
「在るとすれば其れは、」
 この手にあるのは人の命を如何にも出来る術。手先一つで目の前の命を生かすも殺すも自由にできるのだ。
 救わなければ。違う。罪悪感など背負わないで済むように。己の力量を確かなものにするために。
 動機は何処までも浅はかで愚かしい。それをわかっていて尚、この手は数多の命を救う。矛盾を抱えながらただ淡々と己の腕を磨きあげていくのだ。


この身体、朽ち果てるまで

 されども屍の山は、静かに積み上げられていく。


end.
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そこはかとなく暗いですね(笑)
でもこんな話が大好物です。苦手な方はすいません……

御題は 輝く空に向日葵の愛を 様より

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