■ 囁いて微笑

「長次、これ」
 図書室の返却口にやってきた仙蔵は数冊の本と共に貸し出しカードを差し出す。カードは下までぎっしりと埋まっており、新しいカードが欲しいのだという。
 長次は引き出しからさらのカードを取り出すと小さく呟く。
「…おまえは学園の中でも本を読むのがずば抜けてはやい」
「それに比べ文次郎は亀のように遅いけどな」
「今も貸し出し期限の過ぎている本が幾つかある。はやく返すよう催促しておいてくれ」
「わかった」
 長次は新しいカードに新たに記入すると判印を押して仙蔵に返す。
「ん?この本を借りた覚えはないが」
「前からそれ、読みたがっていただろう?」
「わざわざ取り置いてくれたのか!すまんな」
「いや、それは私の私物だ。別に返してくれなくても構わない」
「有り難う長次、大切に読ませてもらう」

 二人のやり取りの一時始終を見ていたきり丸は後にこう語ったという。
 あんな風に柔らかく笑う中在家先輩は初めてみた、と。


end.
-----
SS企画第八弾!!
長次はとことん仙蔵に甘いと思います。
仙蔵にとって長次は素直に甘えられる相手ですよねきっと!

御題はDiscolo様より

[ prev / next ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -