■ 焦がした思いを夕焼けに

 小さく啜り泣く声が聞こえたような気がして、何事かと声のする方へ行ってみれば三年生の伊賀崎の姿が見えた。
「どうした伊賀崎、怪我でもしたか」
 伊賀崎はふるふると左右に首を振る。
「この時期になると虫たちは皆死んでしまうから……」
 一匹一匹の墓を作っていたらしい。伊賀崎の手は土で真っ黒になっていた。
「それは、淋しくなるな」
「もうすぐでジュンコも冬眠してしまうんです…冬は私を一人にする。だから大嫌いなんです…!」
 私は伊賀崎の隣へしゃがみ込み、軽く頭を撫でてやる。
「今は皆死んでしまっても、子を残し、子孫を残すことで奴らは生きた証を残す。そうだろう?」
 こくこくとうなずく伊賀崎に私は笑ってみせた。
「おまえのしていることはけして無駄にはならない。おまえの虫たちに対する誠意は虫たちにも伝わっているし、私もしっている。自信をもて」
「…はいっ」
 涙声ながらも返事をして、伊賀崎は安心したように小さく笑みをこぼした。


end.
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第四弾は孫仙!仙孫にみえるとかそんなこといわないでください、孫仙です(笑)

仙蔵の優しさは相手を“認める”ことなんだと思います。そんな妄想からこうなりました。

御題はDiscolo様より

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