■ 焼き付ける姿

「喜八郎、少しの間じっとしていろ」
 立花先輩の手が私に向かってのびる。
 いわれた通りじっとしていると、立花先輩の手には一匹の揚羽が捕らえられていた。
「どうだ、綺麗だろう?」
「ええ、」
「ちょうどおまえの頭にとまっていたんだ」
 先輩の手の中で揚羽が息苦しそうに頻りに羽根をばたつかせている。
「あまり意地悪をしては可哀想ですよ」
「…それもそうだな」
 あとで生物委員にどやされるのも面倒だ、と先輩がぱっと手を離すと勢い良く揚羽が飛び出す。

 空に向かって飛んでいく姿はまるで先輩のようだった。


end.
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ss企画第三弾は綾仙でした―
仙蔵を虫に例えるなら肉食系(蟷螂(かまきり)とか(笑))かな、とも思いましたが最終的に揚羽蝶に落ち着きました。

御題はDiscolo様より

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