■ 背中に背負うは業の剣

 五年と六年の長家は他の学年と比べ比較的近い場所に位置している。
「あ、」
 まだ日も昇りきらない早朝。下級生が起き出す前に汚れた制服を洗ってしまおうと尾浜は五六年共同の井戸に足を向けていた。
「どうした、こんな早くに」
「先程実習から帰ってきたんです。大分汚れてしまったので今の内に制服、洗ってしまおうと思って」
「…他の輩が来る前に早く済ませた方がいい」
 先輩はちらりと手元を見、理解したとばかりに頷いて見せた。
「はい」
 桶一杯に水を溜め制服を浸せばみるみるまに赤く染まる。
「あとで私の部屋に来い。臭い消しをかしてやる」
「わざわざ有り難う御座います」
 何回か濯げ内に大分取れてきた。
「では後ほどお伺いします」
「ああ、待っているよ」

 染まる赤が目に焼き付いて離れない。
 あの人も幾度となくあの翠の制服を、己の手を汚したのだろうか。

 遠ざかる背中は何も語ってはくれなかった。


end.
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まさかの尾仙です。
尾浜は結構血とか平気な気がします。
後輩のことを一番に考えてあげる勘ちゃんとか好きです。

御題はDiscolo様より

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