■ 気が付けば傷つけていて
ぎしり、ぎしりと、麻縄が軋みをあげる。
両目を覆う目隠し布が、仙蔵の視界を暗闇に染めていた。
「ねぇ仙蔵。こっち向いて」
そんな事を言われても、目隠しをされていては伊作の方を向くのは叶わない。
声のする方向に顔を向けるが、どうやら間違っていたらしい。ぱしん、と頬を打たれた。
「残念、はずれ」
ワイシャツを一枚羽織っただけの格好で広めのダブルベッドに転がされた仙蔵は怯えたように体を小さく震わせる。
「…っ……!」
「怖がらないで仙蔵。今日は優しくしてあげるから、こっちへおいで」
いつもならさらに酷な事を伊作は強いてくるのだが今日は少々勝手が違うらしい。
するりと目隠し布をほどかれ、目尻にたまっていた涙が仙蔵の頬を伝った。
「なかないで…綺麗な顔が台無しだ」
仙蔵の瞼に唇をふらして、伊作は指先で輪郭をなぞる。
「仙蔵には僕しかいないんだから。仙蔵はこれから先もずっと独りぼっちで、生きていかなきゃいけないんだよ?」
仙蔵はこくこくと頷く。そうして伊作に手をのばし、抱擁を求める。
「僕は仙蔵が好きだから時々叩いちゃったりするけど、それも仙蔵が好き故の愛情表現なんだ」
鼓膜に染み渡る伊作の声が、仙蔵の脳髄をじわりと犯していく。
「すき」
「僕も好きだよ」
「もっとすきっていって」
「好きだよ、……好き。誰よりも僕は仙蔵を愛していて、仙蔵も僕を愛してる」
肩にかかっているだけでもはや機能をなしていなかったワイシャツを脱がして、白い肌を露わにする。
「…とっても綺麗……汚しちゃいたいぐらいに」
麻縄をといて、赤く擦り切れた手首を撫でる。
「今から一緒になろう…ほら、足をひらいて」
流し込まれる毒を享受して、離れられなくなる。
気が付けば傷つけていて
(でもそうでもしないと愛なんて形にできないだろう?)
end.
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我ながら酷い話だと思います(爆)
仙蔵を洗脳する伊作が書きたかったんですが見事に失敗しました……
御題は 輝く空に向日葵の愛を 様より
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