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ジニーとはそれから何度か顔を合わせた。もっとも、名前の方が何となく彼女を探しているからだ。赤毛の生徒はホグワーツにも沢山居るが、ウィーズリー兄妹の燃えるように明るい赤毛はなかなか居ないし、その中でもジニーは唯一の女の子な事もあって見付けやすかった。彼女は一年生の友達と一緒に居る事もあるし、かと思えばホグワーツをふらふらと一人で歩いている事もあった。
一度、名前は彼女とその友達が迷子になっている所に出くわした。
「イ、イートン校……!?」
ジニーの友達、グリフィンドールのコリンはそう言ってぱかっと口を開けた。どうやらマグル生まれらしい。
「それって学校なの?」ジニーが言った。
「イギリス一の名門校だよ! すっごく優秀で、由緒ある人しか入れないんだ! 凄いや」
「結局入らなかったんですけどね」
ジャスティンがそう言ってから、「ホグワーツは素晴らしいですよ。此処ではみんなが普通だ。落ちそうになったゴブレットが空中で止まっても、零したインクがいつの間にか消えていても、誰も何も言わない。僕はホグワーツに来て良かったと思っていますよ」と付け足すと、コリンだけでなくジニーも嬉しそうにはにかんだ。
どうやって西塔まで来たのかも解らないという一年生の二人と共に、グリフィンドール寮のある東塔を目指す。名前はいくつか抜け道を教えたが、ジニー達は目を丸くするばかりだったし、ジャスティンは少し困った顔をしていた。どうやら入学したばかりの一年生に正規でない道を教えるのは少し早いと考えているようだ。
ジャスティンがコリンが首から提げていたカメラについて尋ねると、コリンは嬉しそうに話し出した。誕生日プレゼントに父親に貰った事、これを使ってホグワーツの事を両親に伝えようと思っている事、マグルのカメラだが、魔法界の現像液を使えば普通の写真――魔法界での普通の写真の事だ――になるという事。
ジャスティンだけでなく、名前やジニーも驚いた。確かに彼が持っているのは電気で動くデジタルカメラではなく、昔ながらのフイルムカメラのようだった。名前達が口々に凄いねと言うと、コリンは誇らしそうに笑った。
スリザリンのクィディッチチームが七本のニンバスを寄贈されたと聞いた時、名前は何かの冗談だと思った。しかしクラッブにそれを言うと、馬鹿にしたように鼻を鳴らすだけだった。どうやら本当らしい。
「ずるくない? 不公平だよ。箒の差が勝敗を分けるかもしれないじゃん。全寮にプレゼントすべきじゃない?」
「お前、クィディッチ興味ないだろ。よく言う」
名前は舌を出した。クラッブの言う通りだったからだ。
クラッブが言った事を繋ぎ合わせると、マルフォイの父親が理事を務めていて、その息子が所属する寮のチームの成績が芳しくないので、活を入れる為にスリザリンチームに最新型のニンバスを人数分プレゼントしたらしい。また、マルフォイ本人は新しくシーカーになったそうだ。
息子をシーカーにさせる為に寄付したのか、チーム側がマルフォイに気を遣ったのかは解らないが、どちらにせよ結果は変わらない。名前としては色々と問題があるんじゃないかと思うのだが、クラッブは特に気にしていないようだし、ハッフルパフの名前にはあまり関係のない話だった。
名前は昨年見たスリザリンチームのシーカーを思い出しながら、「良かったね」とだけ言った。ハリーの飛行に気を取られがちだったが、スリザリンのシーカーが特に下手だった印象は無かった。
名前は二年生になっても箒の自主練習を続けていた。ドラゴン使いになるには箒が上手い方が良い、そう勧められての練習だったが、身に付いているかどうかは微妙なところだ。が、箒は乗れるに越したことはないだろう。湖にも行きたかったが、今の所、晴れた日の空き時間は殆ど箒に費やしていた。これから寒くなるので、箒の練習は今しかできないのだ。
自分の箒は持っていないし、そもそもマグルの街中に住んでいるので、夏休み中に練習する事はできない。名前は学校の備品の流れ星、その全てに乗ったんじゃないかという謎の自負があった。
空中で一息つきながら、次は一回転とか挑戦してみようかなと考えていると、眼下から名前の名を呼ぶ声がした。下を見ると、ハッフルパフの男子生徒が名前に向けて手を振っている。
名前が地面に降り立つと、セドリック・ディゴリーは「流石だね」と褒めた。彼は名前より二つ年上の四年生だ。寮のクィディッチチームでシーカーを務めているが、この夏の間にますます背が伸びたようで、シーカーというよりチェイサーやビーターの方が似合いそうだった。もちろん、身軽で小回りが利く方がシーカーに向いているというだけで、身長が高いからシーカーになれないというわけではない。
前もこんな事あったなと思いながら、名前は「何か用だった?」と尋ねた。
「今から選抜があるんだ。君も参加したいんじゃないかと思って」
「選抜? 何の?」
「クィディッチだよ」
不思議そうに口にするセドリックに、名前はああと頷いた。談話室の掲示板に、そういえば選手募集の告知が貼られていた。
七年生が卒業したので、その分の補充をする為、寮内で希望者を募り、選手の選抜を行うのだ。名前は意識していなかったが、寮生達は盛り上がっていたし、名前の友達の何人かは選抜を受けると張り切っていた。その選抜日が今日だったらしい。
名前はよく箒を練習しているし、クィディッチをやりたいんだと思って。そう言って人の良い笑顔で微笑むセドリックは、どうやらわざわざ名前を探してくれたらしかった。名前は言葉に迷った。
「えーっと、あたしそんなにクィディッチって好きじゃなくて。見るだけで良いっていうか……」
「そうなのかい?」セドリックが言った。「てっきり、君はクィディッチをしたいんだと思っていたんだけど」
名前は肩を竦めた。「箒は乗れた方が良いって教えてもらったの」
「君は充分上手だと思うよ」
「そう? ありがと。でもドラゴンと追い掛けっこするにはまだ足りないでしょ?」
「ドラゴンだって?」
セドリックが目を丸くしたので、名前は打ち明けるか迷ったが、結局口にしてしまった。「あたし、ドラゴン使いになりたいの」
「魔法も大事だけど、箒に乗る機会も多いから、箒は練習しておいた方が良いって友達に教えてもらったの」
子供の魔法使いに一番人気の魔法生物は恐らくドラゴンだ。しかし、就学頃にはドラゴンがカッコいいだけの生物ではないという事が理解できるので、ドラゴンに夢中な男の子は段々と減っていく。魔女なら尚更だ。
別に名前がドラゴンが好きだからといって、誰かに馬鹿にされた事があるわけではなかったが、名前の友達と違い、セドリックは名前の破天荒さにあまり慣れていない。ハンナ達は名前がエルンペントを近くで見てみたいと言ったり、マグルの動物園みたいに魔法生物の動物園を作るべきじゃないかと言い出したりしても、すっかり気にしなくなってしまったが、セドリックはそうではないだろう。
ドラゴン使いになりたいというのも、彼の目から見ればかなり突拍子もない発言に見えたに違いない。ドラゴンに追い掛けられたいから箒の練習をしているというのも、かなり現実的じゃない。しかも名前は魔法使いではなく魔女だ。
しかし、セドリックはまったく馬鹿にしなかったし、何なら折角選抜の事を教えてあげたのにと自分勝手に怒ったりもしなかった。
「ドラゴンが好きなのかい?」セドリックが言った。
「うん。変?」
「まさか。少しも変なんかじゃないよ」
僕は中国のドラゴンが好きだよと言うので、名前もにっこりした。
九月が終わりに差し掛かった頃、チャーリーから手紙の返事が届いた。彼が書いたところによると、ジニーの組み分けの結果を知らせたのは、名前からの手紙が一番先だったらしい。名前は何となく安心した。どうせなら役に立った方が嬉しいからだ。
デメテルは随分頑張ってくれたのだなと思ったが、読み進めると、事情は少々違うようだ。曰く、ウィーズリー家の梟はかなりの高齢なので、ルーマニアに来るにはかなりの日数がかかるらしい。また、長兄のビルがエジプトに住んでおり、彼の所に向かう方が先なので、どうしてもチャーリーへの連絡は遅れてしまうのだそうだ。
名前は返事を届けてくれた梟がかなりふらふらしていた事を思い出した。長旅で疲れたのだろうと思ったが、あれがウィーズリー家の梟だったのだろう。また、九月二日の朝、エロールはホグワーツに手紙を届けていた筈なので、チャーリーへの配達はますます遅れたに違いない。
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