ギブミープリーズ

※ガロウ編終了後設定

 えー!と名前が叫べば、ゾンビマンは少しだけ眉を顰めた。うるさい蝿を見ているかのようだ。失礼な話である。
「何それずるくない? 私だってやったことないのにさあ」
 口を尖らせてみたものの、ゾンビマンはただ迷惑そうな顔で「当たり前だろ」と言っただけだった。名前はますます膨れっ面になる。
「私だってゾンビマンの血、吸ったことないのに」

 怪人……協会?とかいう所に、ゾンビマンは仲間のヒーロー達と一緒に突入してきたらしい。別にそれは良いのだ。だってゾンビマンはヒーローだし、不死身の彼が死ぬ筈はない。少なくとも名前はそう信じている。そもそも名前はヒーローをしているゾンビマンが好きなのだ。もっとも、ヒーローだから好きなのではない。
 しかし、ゾンビマンは言った。怪人に血を吸われたと。
 訳が解らなかった。一体どこのどいつが、私のゾンビマンの血を吸ったというのか。彼が言うには、吸血鬼の怪人だったらしい。吸血鬼。そんな、ホラー映画でしかお目に掛かれないような存在に、ゾンビマンは血を吸われたというのか。

 別に、名前はゾンビマンを自分の所有物だと思っているわけではない。思っているわけではない筈なのだが、何故かしら腹が立った。自分の中の鍋がぐらぐらと煮え立ち始めている、そんな錯覚を覚えたのだ。

「お前な、自分が何言ってるのか解ってんのか?」
「解ってるわよう……」
「そういうの、カニバリズムっていうんだぜ」
「でも――」名前は口籠もる。「――だって、ずるい」

 名前が拗ね始めたのをいち早く察知したのだろう、ゾンビマンは嘆息した。そして、「仕方ねえなあ……」と呟く。
「飲ませてくれるの?」
「おい、ハードル上がってるじゃねえか」ゾンビマンは眉根を寄せた。
 それに、させるわけないだろ、俺にはそんな趣味ねーよ、と彼は付け加えた。それを言うなら、名前だってそんな加虐趣味は無い。そして今思い出したように、「それに不味いらしいぞ」と更に付け足す。名前の仏頂面を見て、ゾンビマンは微かに笑みを見せた。
「血を吸わせてはやれないが、名前、お前には俺の全部をやる。血も、肉も、骨も、何だってくれてやる。だからそれで良いだろ」


 言っている途中で恥ずかしくなったのか、彼は口を閉じた時、いつも血色の悪い顔色が少しだけ人並みになっていた。もっとも、名前の顔も赤らんでいるが。
 前々からそのつもりだったんだが、どうやら言い忘れてたらしいな、と、ゾンビマンは苦笑した。

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