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友達との再会を喜んだり、挨拶を交わしたりする間に、名前は教職員テーブルの方を何度か伺っていた。例の新しい教師、ギルデロイ・ロックハートは、八月のサイン会の時とは違い、淡い水色のローブを着ていた。もちろん、見事なブロンドはそのままだ。彼の他はあまり変わりがない――いや、魔法薬学担当のスネイプ先生の姿が無かった。名前は彼の事はあまり好きではないので、退職したならそれに越したことは無いのだが。そして――森番のハグリッドが席に着いた。一年生が到着したのだ。
在校生徒が全員着席すると、校長のアルバス・ダンブルドアが手を上げた。大広間が徐々に静まっていく。「皆、よく帰ってきた。それでは、新しい家族を迎えようかの」
緊張に震える新入生達が、副校長のマクゴナガル先生に連れられて入ってきた。ちょうど一年前は自分達があそこに居たのだと思うと、かなり奇妙な心地だ。名前は二年生になったのだ。
組み分けの儀式が始まると、名前はきちんと見守ろうと姿勢を正した。特に新入生に知り合いが居るわけではないので、普段の名前であれば適当に流していただろう。誰がどの寮に入ろうと、正直あまり興味が無い。が、名前が集中して組み分けを見ているのには理由があった。
知り合いのチャーリー・ウィーズリーからの手紙に、今度妹が入学すると書かれていた。チャーリーはフレッド達の兄で、ルーマニアでドラゴンの研究をしているドラゴン使いだ。去年、名前は彼に手紙を出し、ドラゴン使いになるにはどうしたら良いかと尋ねていた。その後イースターの頃に偶然もう一度手紙を出す機会があり、それから何度かやりとりをしていた。
チャーリーは末の妹が今年ホグワーツに入学するので、もしもハッフルパフになったら面倒を見てやって欲しいと手紙に書いていた。ウィーズリー兄妹は七人兄妹で、一番上の兄のビルから、名前と同学年のロンまで、全員がグリフィンドール生らしい。その為、妹のジニーもグリフィンドールに選ばれるだろうと思ってはいるようなのだが、それでも心配なのが兄心というやつなのだろう。名前には兄弟も姉妹も居ないが、妹を心配する兄の気持ちは解るつもりだった。
妹の組み分けの結果を教えて欲しいと頼まれたわけではなかったが、名前はジニーがどこの寮に入ったのか、彼にちゃんと知らせてあげようと思っていた。が、考えてみればウィーズリーの頭文字はWだ。組み分けはアルファベット順で行われるので、ジニーの組み分けはかなり後の方だという事になる。
その時ちょうどユーリグ・キャッドワラダーがハッフルパフに組み分けされ、名前は目一杯拍手して迎えた。
組み分けの儀式が終わり(ジネブラ・ウィーズリーは無事にグリフィンドールになった)、ダンブルドアが短い挨拶をした後、金の皿がご馳走でいっぱいになった。名前は友達とのおしゃべりや、大好物のシェパーズパイなんかに夢中になっていたので、食事の間にダンブルドアが姿を消し、そしていつの間にか戻ってきていた事に気が付かなかった。もっとも、いつの間にかスネイプが教職員席に座っていた事には残念ながら気付いてしまったが。どうやら退職したわけではなかったらしい。
名前がラムチョップを取り分けていた時、その噂は流れて来た。あのハリー・ポッターが空飛ぶ車で登校し、そして暴れ柳に衝突した。思わず固まってしまった名前に、ラムチョップの順番を待っている生徒が怒ったような声を上げた。慌てて順番を譲り、静かに腰を下ろす。
殆どの生徒は、空飛ぶ車というのは流石にやりすぎで、噂についた尾鰭だと思っているようだ。しかし隣に座るハンナも、名前と同じコンパートメントに乗っていた友達は皆痛々しそうな顔をしていた。あの夕刊を読んでいるからだ。空飛ぶフォード・アングリア、訝るマグル。
暴れ柳は校庭の隅に植わっている古木だ。その名の通り枝をしならせて暴れるので、生徒が近付くことは禁止されている。まさかわざと衝突したわけではないだろうし、どのくらいのスピードでぶつかったのかも解らないが、木も、そしてハリーも、無事では済まないだろう。
「……ふーん、ハリーは車を持ってるんだね」
「笑い事じゃないわ」スーザンが窘めた。
退校処分になったとか、ならなかったとか、そんな囁き声が流れて来る。彼、退校処分になるのかしら、とどこか不安そうにするハンナに、アーニーが「まさか、あのハリー・ポッターを退学にはしないよ」と断言した。名前は彼女の皿にもラムチョップを取り分けてやりながら、「そうだよ」と同意する。
「絶対にホグワーツ特急に乗って登校しなくちゃいけないってわけじゃないし、大丈夫だよ」
「そうなの?」
「だって、ホグズミードに住んでる人がわざわざロンドンまで行かなきゃいけないなら変じゃんか」
「確かに……」ハンナは少しだけ安心したような顔になった。「それもそうね」
名前達の向かい側で、スーザンが難しそうな顔をしていた。彼女の顔には「問題はそこじゃないわ」と書いてある。空飛ぶ車で登校した事で問題なのは、車に魔法を掛けるのは違反だという事、そして何より、車が空を飛んでいる所を大勢のマグルに見られた事だ。しかし結局、スーザンは何も言わなかった。
まあ、あのハリー・ポッターが事故死したとなればもっとずっと大ニュースになっている筈なので、多分、ハリーは無事なのだろう。おそらく退学も免れている筈だ。
確かに空飛ぶ車に乗って空を飛ぶのは、重大な法律違反、しかも国際法の違反だが、ハリーは未成年なのである程度の緩和措置がある。もっともハリーが車に魔法を掛けて飛べるようにしたのなら、フレッドとジョージが言っていた屋敷しもべ妖精の浮遊魔法の件と合わさり、アウトになってしまうかもしれないが、まさか一か月も経たずに再び魔法不適正使用取締局の厄介になろうとは思わないだろう。そもそも、車を飛ばせるようにする魔法なんておそらく二年生のハリーには使えない筈だ。となると、魔法不適正使用にはならない。
――窃盗の方面で起訴されるかもしれないが、まあその場合は車の持ち主の方がより重い罪になるだろうし、問題ないだろう。
魔法族が自動車を所有している事は、特筆して珍しい事ではない。ごちゃごちゃした操作や交通ルールを覚えたり、定期的に燃料を補充しなければならなかったりと不便だが、その反面魔法が関わっていない分安全なので、家庭用に持っている魔法族も少なくないのだ。もちろん空を飛ぶ機能をつけているのは、かなりの怖いもの知らずではあるが。
やがて金皿からデザートが最後の一つまで消えると、ダンブルドアが立ち上がった。
「皆よく食べ、そしてよく飲んだ。さて、いくつか注意事項を伝えておこう。校内にある『禁じられた森』は立ち入り禁止じゃ。入学したばかりの一年生はもちろん、上級生も当然禁止。それを努々忘れることのないよう、改めて警告しておく」
名前は、間違いなくダンブルドアと目が合ったと感じた。
それからダンブルドアは持ち込み禁止品の説明や、その他細かな注意事項の説明をした。「それでは、新しい先生の紹介をしよう。ギルデロイ・ロックハート先生じゃ」
ロックハートが立ち上がると、盛大な拍手が沸き起こった。少なくとも大広間の半分ほどの生徒が熱烈な拍手を送っている。ロックハートは魅力的な笑顔を浮かべ、そして優雅にお辞儀をした。そんな様子を眺めながら、名前はやっぱり何となく好きじゃないなと思った。もっともそれは、仲良しのハンナが彼に夢中になっているからというだけかもしれないが。
やがて歓迎会が終わり、名前達は監督生に連れられてそれぞれの寮へ向かった。
厨房の近くにあるハッフルパフ寮は、丸い談話室の二階部分に上がると、そこが女子寮になっている。寝室の場所は変わらなかったが、ドアには新しく「二年生」と書かれた札が下がっていた。
名前達はそれから少しおしゃべりをしたり、夏休みのお土産を渡し合ったりしていたが、やがてそれぞれ眠りについた。
これからまた一年が始まると思うと、夏休みも楽しかったが、やはりホグワーツも楽しみだ。聞こえてくる寝息を聞きながら、名前もいつの間にか寝てしまった。
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