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 ウィーズリーの二人は、流石に今から行くわけにはいかないし、自分達はクィディッチの選手をやっていて暫く練習がある為、あと二、三日は無理だと言った。それに長雨が続いていたので、どうせならもう少し乾いた時に行きたいという事だった(それには名前も同意した)。二人は決まったらまた声を掛けると言った。
「そういや、君の名前をまだ聞いてなかったな」
「あたし、名前・名字」
 よろしくな名前、と、ぴったり揃った返事が返ってきた。
 二人は玄関ホールに戻ると言うので、名前はそこで別れた。バケツを持ったままだったが、既に中身は初めの半分ほどに減っているので軽かった。上り坂になっている隠し通路を抜けると、彼らが言った通り、城の二階に繋がっているようだった。


 双子が再び名前の前に現れたのは、次の週になってからだった。よう、と後ろから声を掛けられて驚いたが、二人が揃ってニヤッとしたので、名前もわくわくした。正直言って、この数日間名前は楽しみ過ぎてかなり上の空だった。
 ウィーズリーの双子と言えばホグワーツでもかなり有名人で、いつもフィルチと追い掛けっこをしていたり、問題を起こしているという。彼らが言った「もう何度も森に入っている」という言葉も、本当の事なのではないかと思うようになっていた。つまり、名前は禁じられた森に入ることができる。
 二人は名前についてくるように言うと、手近な空き教室に入った。フレッドが適当な机に腰掛けるので、名前もそれに倣う。
「名前、僕達が今から見せるもの、誰にも内緒だって約束できるか?」
「できるよ!」
「よーし」恐らくフレッドだ。
 誰も来ないことを確認していたジョージも名前達の所へ戻ってきた。フレッドはくたびれたローブのポケットから、更にくたびれた羊皮紙を取り出した。

 初め、その羊皮紙には沢山の虫がうごめいているのではないかと思った。何やら図形が書かれていて、その上に無数の動く点があるのだ。しかしよくよく目を凝らしてみると、それはホグワーツの詳細な地図だった。虫のように見えたのはインクで出来た染みで、その小さな点の上にこれまた小さな文字でそれぞれの名前が書かれている。名前は大広間のすぐ近くにあるハッフルパフ寮の中から、ハンナ・アボットと書かれた点を見つけ出した。
 二人がふらふらと歩いていた名前を見つけ出し、そして声を掛けられたのも、この地図のおかげだったのだろう。確かにこれは、かなりの重大秘密だ。二人が地図のことを名前に明かしてくれたのは、海馬の卵を死なせてしまったことへの、彼らなりの謝罪なのだろうと名前は感じた。
「忍びの地図って言うんだ」
 呆気に取られている名前を見て、ジョージが言った。
「凄いね、こんなのどこで手に入れたの?」名前が聞いた。「これがあれば、友達のハンナももう迷わなくて済むと思うな」
 ジョージは少し笑ったようだった。

 二人が熱心に何かを探しているようだったので、名前も彼らの横から地図を覗き込んだ。忍びの地図はホグワーツの全体を網羅していて、地図の天辺には謎の署名が書かれていた。ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ。
 地図には名前がまだ全然行ったことのない場所に加え、明らかに廊下ではない場所にも道が書かれていた。それらは恐らく、ホグワーツの秘密の抜け道だ。忍びの地図は誰がどこに居るか解るだけでなく、抜け道まで完璧に記載されているのだ。
 生徒が沢山集まっている場所は、恐らく各寮の談話室だろう。名前は城の西側に、レイブンクロー寮がある事に気付いた。何の気なしに西塔を眺めていた名前だったが、見慣れた文字列にぎょっとした。「レイブンクロー?」
 西塔の人気の無い廊下を、レイブンクローという名の点が動いていた。もっともロウェナ・レイブンクローではなく、ヘレナ・レイブンクローと書かれている。
「ああそれ、灰色のレディだよ。レイブンクロー寮付きのゴーストさ」
 特に驚いた様子も無くフレッドが言った。彼はまだ地図から目を離さず、じっと何かを探している。「多分、レイブンクローの曾々々々々孫とかだろ」
「この地図、最初に付けられた名前を表示するみたいなんだ。見てごらんよ」
 ジョージが指さしたのは、生徒が多く集まっている部屋の一つだった。彼が指示した辺りを見ると、ネビル・ロングボトムとか、ディーン・トーマスとか、何となく知っている名前がいくつかある。グリフィンドールの一年生だ。多分、グリフィンドールの寮なのだろう。
「ほらこれ、ピーター・ペティグリューって名前、スキャバーズの事なんだ。ロンのペットの鼠さ。前はパーシーが飼ってたんだけど、その頃からこの地図で見るとペティグリューって名前なんだ」
「多分、前の飼い主が付けた名前なんだろ。まあ、鼠に付けるにはかなり洒落た名前だけどな」フレッドが言った。
 ジョージが指で示した場所には、確かにピーター・ペティグリューという名前があった。
 名前はふうんと声を漏らした。自分のペットにわざわざファミリーネームまで付けるのは、確かに凝っている。ひょっとするとペットの名前としてはピーターだけで、名字は飼い主のものなのかもしれないと思ったのだが、梟小屋を見る限りそういうわけでもないようだった。梟達の名前は表示されていないからだ。おそらく、この地図には人名の場合は現れるようになっているのだろう。
「――ロンとパーシーって?」名前が聞いた。
「僕らの弟と兄貴さ」
「四人兄弟なの?」
 ジョージが少し笑ってから七人兄妹だと言ったので、名前はすっかり驚いてしまった。

 熱心に地図を眺めていたフレッドが、「見付けた」と呟いた。
「おっどろき、ハグリッドのやつ、図書室に居るぜ。いったい何を調べてるんだ?」
「さあな」
 二人が立ち上がったので名前も続いた。フレッドは杖を取り出すと、「悪戯完了」と言いながら忍びの地図を杖で軽く突いた。すると忍びの地図は瞬く間に消えた。恐らく、今のが地図を非表示にする為の合言葉だったのだろう。こうして見ると、ただの古惚けた羊皮紙の切れ端にしか見えなかった。使い終わったらこうして消しておくんだ、とジョージがウィンクし、名前は何度も頷いた。


 三人は並んで校庭を歩いていた。フレッドとジョージは時折忍びの地図を取り出し、ハグリッドやその他教授達の居る位置を確認していたが、ハグリッドは今日は読書の気分だったようだし、校庭に居る確率が高いケトルバーンとマダム・フーチはそれぞれ医務室と、クィディッチ競技場に居るということだった。スプラウト先生は七年生と共に温室に留まっていて、校庭で動く点は何人かの生徒が遊んでいるだけだった。
 双子がこれまでに何度か森へ入って無事だったのは、この地図があったからというのが理由の一つらしい。禁じられた森までの道すがら、フレッドとジョージは名前にいくつか約束させた。森に入ったら絶対に二人からはぐれないようにする事、大きな声を出さない事、生えている草に触ろうとしない事――本当に万が一はぐれてしまったら、絶対にその場から動かない事。
 元々名前は彼らの言う事に逆らうつもりはなかったのだが、双子が真剣な表情でそれらを言うので、何度も頷き、絶対に守ると誓った。フレッドもジョージも名前が言った事を心から信用したわけではなかったようだが、森の外れにあるハグリッドの小屋まで来ても、やっぱりやめたと言い出すことはなかった。

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