ハッフルパフへと願う彼の話

 ホグワーツの組み分けの際、一番不人気なのはハッフルパフだと言われている。他の三寮がそれぞれの生徒を選び取る中で、ハッフルパフ寮だけはどんな生徒でも受け入れ、その結果他よりも劣った生徒が集まるという印象が得られているのだ。実際、ハッフルパフは遠慮したいという生徒は残念ながら多い。
 しかし此処に、そのハッフルパフを心の底から望んでいる少年が居た。
 副校長がホグワーツについて説明をし、彼女が一時姿を消した後、途端にお喋りが始まった中で、名前・名字は一人念仏のようなものを唱えていた。
「ハッフルパフ、ええどうぞハッフルパフへ。お願いですからハッフルパフになりますように。これからは嫌いな野菜も食べますからどうぞハッフルパフへ」
「……珍しいね、ハッフルパフを希望するって」偶然の隣にいたリーマス・ルーピンは、一心不乱に呟いている名前にそう話し掛けた。興味が沸いた事もあれば、必死な様が恐かった事もある。

「そうかい? 素晴らしいじゃないかハッフルパフ」
 何せ、寮が地下にあるんだよ? 訳の解らない言い分に、リーマスは頭にクエスチョンマークを浮かべながらも頷いた。誠実な者が住まう寮、素敵じゃないか、生き物に一番必要なものだと思うよ、とにっこり微笑んだ少年に、リーマスは今度こそ頷いた。君はどこが良いのと問われ、リーマスは答える事ができなかった。人狼の自分がホグワーツに来られた事自体が奇跡なのだからと。
 片や吸血鬼、此方狼人間。奇妙な取り合わせが此処に出来上がった。
「さあ祈ろう、どうぞハッフルパフへ。例えどんな手段を使ってでも」
「……とりあえず、それは違うと思うよ」

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