おまもりこばんの使い方

「ほらほらダイゴさん、おまもりこばんですよ! 有り金全部出して下さい!」
「名前ちゃん、きみ、追剥か何かかい?」
「失礼な」
 そう憤慨してみつつ、名前は顔中を口にして笑っている。
 彼女はダイゴがチャンピオンだった頃からの知り合いだ。そしてその座をミクリに渡してからも、こうしてちょくちょくダイゴの元を訪れる。実のところ、恐ろしくポケモンバトルの強い名前に、今まで勝ったことがない。
 わざわざ流星の滝まで来て小遣い稼ぎか、と、ダイゴは一人苦笑した。彼女はもちろん、ダイゴがツワブキ氏の御曹司だと知っている。

「ダイゴさん、これからポケセンですか?」
「それはきみが一番よく知っているだろ」
 ぺらぺらになってしまった財布を仕舞いながら言えば、名前もパートナーをボールに戻したところだった。何故だか彼女のバシャーモにじっと見られていた気がしたが、理由は知れない。
「じゃあ、わ、私も一緒に行ってあげます!」
「うん? ……わざわざありがとう?」
「それで、ダイゴさん、いま文無しですよね!」
「きみとの勝負に負けたからね」
 名前が何を言いたいのか解らない。困り切って、仕方なく彼女の顔を見つめていると、その顔が段々と赤らんでいくことに気が付いた。視線もきょろきょろと忙しない。
「じゃ、じゃ、じゃあ、私が奢ってあげます! だ、だから、一緒にお昼ご飯食べませんか!」
「……ありがとう」ダイゴは微笑んだ。バトル中の彼女とも、平時の彼女とも違う名前は、とても可愛らしく思えた。「有り難く、ご一緒させてもらうよ」

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