愛を紡いで

ノボリさんは最近、不満そうな顔をして居ることが多い

普段から仏頂面だが、それとは違う仏頂面をしている

非番の日だというのに今日も今日とて不機嫌さんらしいお顔で、彼は私の隣に腰掛けてテレビを見ていた

2人掛けソファーの隣からやけに視線を感じてそちらを確認すると、バッチリ視線が絡み合う

何か言い足そうな不満顔に、何ですかと尋ねるとゆっくりと口を開いた

「愛してます…貴女様のことを、とても愛しております」

真っ昼間からの愛の告白はいつものことだ。最初は恥ずかしかったが、今では慣れた

慣れたからといって、嬉しくないわけでは無い。むしろこんなにも好きでいてくれるのかと思うと、嬉しくて堪らない

毎回よく恥ずかし気もなく言えるなとも思うけど

「私もですよ」

「………。」

少し照れながら返事を返してみたが、ノボリさんは黙り込んでしまった

首を傾げると、ムッと顔をしかめるノボリさん。

「どうしたんですか?」

「貴女様は、」

どうして私の欲しい言葉をくださらないのですか?

そうノボリさんは拗ねたように口を少しだけ尖らせる

「もしや、私の気持ちを知っての上なのでございますか?」

「えと、訳が分からないです」

素直にそう伝えると、眉間にぐぐっと皺が寄った

怒らせてしまったらしい

しかし、怒らせるようなことを言った覚えもなくて困惑する

何を言うべきか悩んでいると、ノボリさんの顔が近づいてきて、そっと額に唇を落とされた

見上げると、今度は口にキスをされる

「私は!」

私は…と、少しずつ尻すぼみになっていくノボリさんの髪をなでる

何かを言いたそうに繰り返すノボリさんが、ぐずる小さな子供のように見えてきた

耳を垂れたヨーテリーのようにしょんぼりしてしまったノボリさんは

「貴女様の口から『愛している』と言っていただきたいと思っております…」

と呟くような小さな声で言った

「……ぷっ」

「…笑いましたね」

「ごめんなさい、だって…」

ノボリさんがそんなこと言うなんて意外で…と笑いを堪えながら恨めしそうに見てくる彼に伝える

不満そうな顔も子供のような表情も引っ込めて、ノボリさんは表情を引き締め真顔を作っていた

「私とて男でございまし。愛する女性から好意を口にしていただきたいと思うのは自然のことではございませんか?」

「…っ」

今のはずるい。そして不意打ちでは無かろうか

想像以上に愛されているんじゃないでしょうかこれ…うっかり顔から火が出てしまいそうだ

ノボリさんは涼しい顔をして僅かに首を傾げていた

「どういたしました?」

「ノボリさん…」

「はい。」

「あ、あ、あの」

ノボリさんの目を見て肩に手を置く

ノボリさんと少しだけ距離が近くなる

「愛して、ます。ノボリさんのこと、愛してます」

「っ!!」

ノボリさんはしばらく目を見開いていた

そして、ゆっくりと綻ぶように笑ったノボリさんが、額を合わせてくる

「私も、愛しております。」







 「林檎スニーカー」の凡子さんに、一万打記念のリクエストとして書いて頂きました。凡子さん仕事はええ。
 欲望に忠実なノボリさんと、照れ屋な夢主さんの組み合わせがとても可愛かったです。
 凡子さん、素敵なノボリさん夢をありがとうございました!

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