そりゃ、名前だって考えたことくらいはある。ポケモンになれたら良いな、なんて。しかしそれは妄想の中の話だ。実際にポケモンになってしまうまんて考えたことがない。
 どうしてこんなことになったんだろう。
 名前はいつもの通り、学校から帰ってポケモンをして、ご飯を食べて眠っただけだ。夢なら覚めて欲しい。しかし残念ながら夢ではないらしい。

 仮にこれが何か漫画や小説の中のありがちな展開のように、ポケモンになるのが避けられない運命だったとしたら、いったい何故モノズなんだろう。目は見えないし不便ったらありゃしない。
 単に、こうしてモノズになる前にプレイしていたポケットモンスターブラックで、モノズを厳選していたことが原因だったとしたら、運が悪いにも程がある。別に名前はモノズや、その進化形が大好きだというわけではない。ポケモンの厳選、育成は名前の趣味だったし、今回は特殊タイプのアタッカーを育てたかっただけなのだ。どうせならもっと可愛いポケモンになりたかった。

 モノズになってから、解ったことがいくつかある。
 まず、名前は野生のモノズではないということだ。目を覚ました時――つまり、モノズとして生を受けた時――、頭上から聞こえてきた二つの男の声のその片方は、名前のトレーナーの声だった。
 どうも名前のトレーナーは、新しく生まれたモノズにあまり興味がないらしい。毎食ポケモンフーズらしきものをくれはするので、ちゃんと世話はしてくれているようだが。彼はどうやら口数が少ない方らしい(もっとも、ポケモン相手に話し掛けていてもそれはそれで問題だろうが)。
 第二に、名前は『話せない』ということだ。ポケモンの言葉が喋れないのだ。名前のトレーナーは、名前の他にもポケモンを持っていた。しかしそのポケモン、コマタナが何を言っているのか、名前には解らなかった。アニメのポケモンの世界では、ポケモン同士は話せていたと思うのだが。アニメを見たのが昔過ぎてはっきりとは覚えていない。
 代わりと言って良いのか解らないが、どうやら名前は人間の言葉が話せるようだ。というか、考えてみれば元は人間なのだから、当然といえば当然なのかもしれない。
 ただ、人間の言葉が喋れるポケモンなんて、悪事に利用されるのがオチだと思う。ロケット団とかやりそうだ。もっとも此処はイッシュ地方のようだから、R団は居ないだろう。タマゴから生まれた時、混乱に任せて口を利かなくて良かった。
 とにかく、うっかり喋ってしまわないように気を付けなければ。

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