毎日がつまらなかった。毎日毎日つまらない日常の繰り返し。楽しみといえば、ポケモンをプレイすることだけだ。数字と、ちょっとの運に左右される、ポケットモンスターの世界。名前はゲームの中の世界に夢中になっていた。もちろん現実と虚実が解らなくなるほどにではないが――しかし、時々思うのだ。もしもポケモンになれたら、もっと楽しく生きられるのではないかと。


 名前が目を覚ました時、辺りは真っ暗だった。まだ日が昇っていないのだろうか。それにしても暗すぎる。瞬きを繰り返しながら、突然頭上から降ってきた声にギョッとした。
「それで、新しく生まれたそれの能力はどうなのです」
「はっ」
 叫ばなかったのは奇跡に近いかもしれない。
 声を出せなかったのは、偏に目を覚ましたばかりの名前が、何故だか疲れ切っていたからだ。体が重い。力が入らない。もうしばらく、このまま体を休めていたい。
 どうして知らない人間の声が聞こえるんだろう? それに、どちらも男の声だ。
テンパり過ぎた名前の耳には、その後彼らがどんな会話をしていたのか解らなかった。もっとも、しっかりと聞こえていたとしても、理解はできなかったかもしれないが。
 ただ、「ゴミですね……使えません」という、冷え切った言葉だけが頭に響いた。


「哀れなものよ。所詮お前も我らと同じか……」
 その声が聞こえた時、ようやく名前は自分の身に起きた異変に気が付いた。その言葉は、明らかに名前に向けられたものだった。
 目の前に何かが近づいてきた『気配』がしたと思ったら、頭に乗った大きな物が触れる。がくりがくりと、頭が揺れた。――撫でられている。

 頭が必要以上に上下したのも、目の前が未だ暗闇なのも、音や匂いが今までよりもはっきりと感じられるのも、全ては名前の体が『モノズ』になっていたからだ。

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