じゅうに

 俺はさあ――名前さんが言う。
「別に、年下が好きとかロリコンとかそういうんじゃないわけだよ。決して」
 チェレンくんは誤解してるのかもしれないけど、とか何とかブツブツと続けるが、生憎とよく聞き取ることはできない。元々、彼はあまり此方の言葉が得意ではないのだ。
「たださあ、俺も男だからさ、悪い気はしないんだな、これが」
「ヒモの上にニートでロリコンですか」
「君が俺をどう思ってるのかよく解るね」
 特に傷付いた様子もないのが癇に障る。

 と、インターフォンが鳴る。名前が立ち上がり、ドアへと向かった。その後をタブンネもとてとてとついていく。僕が来た時にはこんなにすぐに出ない癖に……と、チェレンは内心でそう毒づいたが、理由が解った。
「あれ、チェレン? 名前さんの家で何してるの?」
「いや……」
 きょとんと首をかしげてみせるベルに言葉が詰まる。
 その彼女の後ろで、面倒くさそうな顔をしながらとっとと失せろと手を動かす名前に殺意が沸く。ポケモンバトルでぎったぎたにしてやりたい。しかし今のチェレンと名前の実力の差は歴然で、何度ポケモンバトルを挑んでも、その度に全滅させられるのだった。
「ベル、名前さんに何かされたらすぐに僕を呼ぶんだよ」
「うん? 何かって?」
「いや……」
 名前の表情が「メンドー」から「にやにや」になった。腹立つ。


 二人は付き合うようになった、わけではない。正確には。
 ベルの押しに負けた名前が、一つの条件を出したのだ。あと五年待って、その時にもまだベルの気持ちが変わっていなかったら、その時には応えると。
 この間のバトルサブウェイの一件で、どうやら彼は色々と開き直ったようだ。チェレンの申し込むバトルを拒まなくなったし――未だにトウヤだけは拒否しているらしいが――、こうしてベルを家に上げるようになった。チェレンは名前に、イッシュに来るまで何をしていたのかを尋ねることはしなかったが、思うことはある。まあ、多分、それまでの彼は何らかの負い目があったのだろう(後にそう言った時、「馬鹿か。俺がベルちゃんに手を出したら犯罪だろうが」と言われた。理解に苦しむ)。
 何だかんだと言い訳をしていたが、つまりはロリコンなのだろうと思う。

 チェレンが名前を部屋を出た時、見送りに立った名前が、チェレンにだけ聞こえるようにぼそりと言った。振り返った時には既にドアが閉まっていて、チェレンはそこに佇むより仕方なかった。
「気に入らないなら、自分でモノにしてしまうと良い。ま、俺は奪うのも得意だけどね」

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