「君みたいなトモダチと会うのは初めてだ」
「ああ。俺もあんたみたいな人間と会うのは初めてだ」
「よく言われるよ」
 柔らかな緑色の髪をした青年と、イッシュでは見慣れないポケモンが、同じように地べたにしゃがみ込んでいる。遊園地を行き交う人々は見慣れないポケモンを好奇の目で見はするが、誰もが彼らの間で行われている「会話」にまで意識を向けることはしない。
「ジョウト地方から来たと言ったね、君と君のトレーナーは何をしに此処に来たんだい? ジョウトとイッシュはとても距離が離れていると思うのだけど」
「さあなあ」そう言って、ちょっと上を向く。頭蓋骨に隠された表情は読み取り辛いが、人間で言うならば、答えに迷っているというところか。

「名前と言ったね、彼はいつ頃戻ってくるだろう。僕は君のトレーナーに興味が沸いた。君と一緒に待っていたら会えるだろうか」
「さあなあ」ポケモンは再びそう言った。
 先程、この奇妙な二人組の様子を気にする者は居ないと言ったが、正確には間違いだった。彼らから少し離れた所に一組の家族連れが居て、顔を青くした男が何度もその二人の方に目を走らせていた。正確にはポケモンを――ガラガラを見ていた。妻と娘はそんな父親の様子を不思議そうに眺めている。ガラガラがちらりとその家族連れの方を見ると、男は過剰なまでに身を震わせた――まるで何かを恐れているかのように。


『あなた、一体どうやって私の番号を知ったのです』
「さあ、どうしてだろうなあ」名前はしらばっくれた。
 名前のライブキャスターは通話中と表示されてはいるが、相手の顔は表示されていない。それもその筈で、通話の相手はライブキャスターを持っていないのだ。
 独自に改造を施したライブキャスターは、可愛らしい赤色をしている。実は以前にベルと共に購入したものは壊してしまっていた。これは二つ目だ。まあ言わなければばれはしまい。
 名前は特に頭が良いわけではない。機械の改造等といった細かな作業は不得手だったが、それでもライブキャスターとポケッチを通話可能にするくらいはできる。一度失敗したわけだが。
『……驚きましたよ。殺しても死なないだろうとは思っていましたが、やはり生きていたとはね』
「ひどい言い様だな」名前が冷やかに笑う。「俺達は仲間だ、そうだろう?」

 通話先の声の主は、名前に何の用かと尋ねた。五年もの間何の音沙汰もなかったのに、今更何の用だと。
「いや、何、ちょっと懐かしい顔を見たんでね」

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