僕と契約して、ヒーローになってよ!

 カップ麺にお湯を注いでいる時、インターフォンが来客を知らせた。誰かが来る予定はない。そして友達は一人しか居ない。セールスも新聞も勧誘もお断りだわーと思いつつ、重し代わりの箸を乗せると、控えめなノックが三回聞こえた。これはキングだ。
 鍵を外し、ドアを開けると、やはりそこに佇んでいるのはキングだった。
「なに? どしたの?」
「名前氏にちょっと見て欲しいものがあるんだけど」
「私に?」
 カップにお湯を注いだばかりだ。名前がそれを告げると、どうやら急ぎの用ではないことが判明。一緒にカップ麺を食べて(お湯はまだあった)、二人はキングの部屋に向かった。

 これなんだけど、と差し出したのは、彼のノートパソコン。PCが壊れたと言われても私は何もできないぞ、と思いながら覗き込めば、思わず口から先程の麺が飛び出そうになった。
「何これ」
「やっぱり名前氏なんだ」


 キングが見せたのは、とあるサイトだった。というか簡単に言うと、ヒーロー協会のホームページだった。見出しには「この人を探しています」とあり、載せられている写真は、明らかに名前だった。背後からの写真、横からの写真などはっきりしないものが多いが、確かにこれは私だ。何、何が起きているの。
「あー……これ、こないだのJ市の……」
 シェルターの、中だ。あの非常時に写真を撮っていた奴が居る、だと……?
「え、ていうか何? 何で私探されてるの?」
 写真の下には名前の背丈や体格など、恐らくあの場に居た時に得ただろう情報が少なからず書かれている。更に下には「情報求む」とまで書かれている。何が起きているのかさっぱりだ。
「もしかしてヒーロー詐称罪?」
「何したの名前氏」
「面倒臭かったからヒーロー名乗った」
 怪人ってヒーローしか倒しちゃいけないんでしょと言うと、どこから拾ったのその知識と呆れられた。何だ違うのか。それなら良い。あの白いスーツのお兄さんには一度文句を言わなければ。
「え、じゃあ何で私探されてるの?」
「あれでしょ」キングが言った。「ヒーローやって欲しいんでしょ」

「はあ?」名前が聞き返した。
「名前氏だって知ってるでしょ。最近、怪人の出現率が上がってるんだよ。だから協会の方も、怪人と戦えるヒーローを増やしたいんじゃない」
 もっともな言い分だ。もっともだが、
「私、この間の時別に何の役にも立ってないんだけど」
「そうなの? まあ怪人に向かってった勇気だけでも称賛に値する、とかそんなじゃない?」

 良いじゃんヒーローやりなよ、とキングは気軽に言った。どうやら、やる気ない仲間を増やしたいらしい。誰がやるか。
「私、暫く表に出ない」
「名前氏はいつも引き籠ってるだろ」

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