あの名前という男、ベルが自分を好いていることは解っていたらしい。知ってて無視を決め込んでいるということじゃないか。何て奴だ。
 この間名前に会った時、チェレンはますます彼への嫌悪感を募らせていた。やっぱり、あんな奴はベルに相応しくない。
 ただ、ベルの方はやはり名前を好いている。彼女曰く、「一目見た瞬間ビビビときた」らしい。
 以前、「ベル、あの人大分年上だよ?」とさりげなく言ったところ、「チェレン、名前さんが同い年だと思ってたの?」と不思議そうにされた。会話が噛み合ってない。チェレンは名前の年齢を知らなかった。もっとも知りたくもないが。とにかく、カントーだかジョウトだかの出身の彼は、このイッシュ地方だと随分と幼く見えるのだ。が、チェレンは彼の言動から、そこそこ年が離れていることは察知していた。
 ただ、大人だろうと何だろうと、普段何をしているのかも解らないような不審な奴に、大事な幼馴染みを渡すわけにはいかない。

 チェレンのお節介染みた思いも知らず、ベルは嬉しそうに名前との思い出を語り続ける。
「−−それでねえ、名前さんライブキャスター持ってなかったから、一緒に買いにいったんだよ。一番に登録してもらっちゃった」
「……ベル、ストップ」
「うん?」
 きょとんと首をかしげてみせるベルに、チェレンは少しだけ言葉に迷った。
「まさかベル、名前さんにライブキャスターを買ってあげたりとかしてないよね」
「うん、名前さんお金無いって言ってたから」
「……」
 へらりと笑うベル。お揃いにしたんだあ、と言って笑うその顔は、本当に幸せそうだ。ほわほわと微笑む彼女に、つい絆されそうになる。
「ベル、頼むから、無駄に貢いだりしないでくれ」
「……? うん」
 やっぱり駄目だあのニート。早く何とかしないと。

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