「黒い精子さんちーっす。一緒にババ抜きしないですか?」
「お前本当に唐突だよな」
 アジトの中をうろついていると、小柄な怪人に巡り合った。黒い精子である。
「つか何? ババ抜きって」
「カードゲームですよー、人間の。ホームレス帝さんと二人でやってたんですけど、二人じゃつまんなくて」
「や、その説明じゃわけわかんねえよ」
「大富豪でも良いですよ」
「聞けよ人の話を。なめてんのか」
 声が苛立ちを孕んでいた、それでも彼は比較的穏やかな質をしていると思う。何故なら、大抵のことをこうして顔を顰めるだけで流してくれるからだ。多分、膨大な数の自分が居るから、忍耐力もそれだけ高いんじゃないかな。他の連中は少しからかっただけで殺しにくる。もっとカルシウムとれよ。エビル天然水など、名前を見るだけで攻撃を仕掛けてくる。奴はエビル牛乳にでもなるべきなのだ。
「つか何で俺? もっとノリの良い奴誘えよ」
「フェニックスさんはカード持てないし、ムカデ先輩は部屋に入れないし、サイコスさんはエスパーでずる出来るんで駄目っす。うっす」
「お前サイコスをノリが良いとかすげえな」
 尊敬するよ、と黒い精子。ねえちょっと精子さん、顔に呆れが滲んでますよ。

 何だかんだで黒い精子は付き合ってくれた。途中で魔ロン毛も誘う。ブサイク大総統、ダイショッカンには断られた。まあ二人居れば良いかと思い、名前達はホームレス帝の部屋へ向かう。そこにはホームレス帝の他にバンパイアと爆走兄弟が居て、少し悔しかった。私の方が誘えた人数少ねえ。


「てめっ、こら名前、何で俺ばっかにババ寄越すんだ。死ねよ」
「いやいやいや、順番ですからねー」
「あっ……ににに兄ちゃんどうしよう」
「落ち着け弟よ。こんな時こそ我らのスピードを見せ付けるんだ」
「うん!」
「はいそこ、ずるは禁止すよー」
 兄弟からブーイングが起こった。うるせえ糞ガキ。ぶっ殺すぞ。
 一足先に上がっていたバンパイアとホームレス帝は、残りの面子が全てのカードを手放すのを待っている。次で八戦目じゃないだろうか。何気にホームレス帝はババ抜きが強くて、先程から首位か二番目という好成績を残していた。というかバンパイアうるせえ。黙ってろ。さもなくば死ね。
「猿も木から落ちる。ロン毛も上がれず」
「てめえもうざいんだよ魔ロン毛。あと全然うまいこと言えてねえんだよ、お前」
「ハァー、オイオイ、いい加減決着付けろよぉ。退屈しちまうじゃねぇかぁ!!」
「うるせえ吸血鬼死ね糞が」
「名前、本音が漏れているぞ」
「本音じゃないですし。建前ですし」
「いや尚悪いだろ、それ」
 なんだかんだでみんなノリが良い。多分、怪人協会に入った連中は災害レベルじゃなくて、ノリの良さで選ばれてるんじゃないかな。ちなみにこの後日、何故私を誘わなかったとサイコスに怒られた。やっぱりこいつもノリノリじゃねえか。

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