ド●ルド私をあっためてよ!

 四天王のオーバは、私の幼馴染だ。四つん這いだった頃からの付き合いだから、奴にとってしてみれば消し去りたいあんな話やそんな話を私は知っている。無論、それはあっちも同じことだが。そんな幼馴染は今、アフロである。
 いつからだったか忘れてしまったが、気が付いた時にはアフロだった。
 最初は驚愕した。次に笑ってやった。それはもう、存分に笑ってやった(そうだ、オーバがアフロになったのは、奴が四天王になるかならないかの頃だ。今までの人生の中で、一番奴に会っていなかった時期だ。だから記憶がごく曖昧なのだろう)。同じく幼馴染のデンジを交え、腹が捩れ切り八つに割れてしまうんじゃないかというくらい笑ってやった。
 しかも奴の毛は赤い。地毛が赤い。そりゃもうゴウカザル顔負けの赤さだ。赤毛でアフロ、いとも簡単にアレが連想されてしまうのは仕方がない。
 私もデンジも、ことあるごとにオーバをからかった。最初の頃は某キャラクターの名で呼ばれるたび、「オーバだよ!」と憤慨していたが、近頃では奴自ら例のキャラクターを演じるようになった。諦めのいいやつである(以前、オーバをバトルに誘った時、奴の返答はこうだった。「アイムラビニッ!」。泣くほど爆笑するのは久しぶりだった。デンジなんか、笑いすぎて立てなくなっていた)。

 私とオーバが恋人同士という関係になってからも、別段それらのことは変わらなかった。既に私たちの中ではアレ関係のギャグは鉄板になっていたのだ。私はオーバをあまり名前で呼ばないし、デンジは私達の仲を冷やかすより、やはり例のキャラクターに託けてオーバをからかうことの方が多い。
「誤算だった。ドンは熱いものだと思ってた」
「オーバだよ。というよりお前は俺をなんだと思ってるんだよ」
「燃える男」
 オーバが私の頭をはたいた。しかしぺしりと間抜けな音がするばかりで、全然痛くないのがオーバらしいというかなんというか。
 近頃めっきり寒くなって、先ほどから口を出るのは「さむい」という言葉ばかりだ。草タイプを専門としているせいなのかそうでないのか、シンオウ出身だというのにどうも寒さには弱い。こうかばつぐんなのだ。
 どうして特性がほのおのからだでないのかと呟くと、それは俺の事かとじっとりと見られた。
 うーうー唸っている私を見かねたらしい。オーバは私の手を取ると、自分の口元へ持って行った。冷え切った私の手が彼の体温を着実に奪っている。あったかい。オーバが息を吹きかけて、指の先が少しくすぐったかった。
「ドナルドのあついといき! こうかはいまひとつのようだ!」
「いまひとつかよ」
 オーバが屈んでくれているおかげで、いつもより顔が近く、細かな表情も解る。仕方ないなあ、オーバの苦笑はそう言っていた。
 ちゅ。
 音にするならそんなところか。オーバのおかげで段々と指先の感覚が戻ってきていた。その矢先、唐突に熱い何かが指に触れた。
「ちょ……」
 ちゅ、ちゅ、ちゅ、と、オーバが私の手にキスを降らしている。くすぐったさよりも恥ずかしさの方が私をより強く襲っている。私は唖然として、彼の奇行を眺めていた。が、真っ赤なアフロしか見えない。
 オーバが顔を上げた。
 ちゅっ。
「悪いな、ついやっちゃうんだ」
 私に短いキスをしたオーバは、そう言ってにやっと笑ってみせた。俗に言うドヤ顔である。



「オーバ……」
「おう」
「ギャロップに蹴られて死ね」
「ひでえ!」

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