ぱらぱらと料理本をめくる。探しているのは食材の保存方法だ。とりあえずとして、肉類や魚類は冷凍庫に放り込んでおいたが、野菜類はどうしようもない。別にネットで調べれば良かったが、どうせゲームの予約をしに来たついでだ。本屋という空間、それ自体は好きだし。
 しかし、その時になってやっと名前は気が付いたのだ。野菜と一口に言っても、その方法は一つ一つ違うのだと言っても過言ではないことを。
 レジ打ち二時間分が消えた。

 会計に向かう途中、ふと名前は週刊誌のコーナーに足を向けた。目当ては、『週刊ヒーロー』というその名の通りヒーローの話題を専門に扱った週刊誌だった。どのヒーローが市民から人気があるだとか、そういうことを主として載せている。そして、名前の記憶違いでなければだが、この雑誌はヒーローランキングも毎週掲載している筈だ。
 ヒーローとしての番付は、週ごとどころか日ごとに変動している。ネットの情報には負けるだろうが、今名前が知りたいのは限られた人数しか存在しないS級ヒーローのことなので、この雑誌だけで事足りるのだ。それに、順位自体が知りたいわけでもない。
 パラパラと捲ると、確かにあった。ランキングだ。
 五ページほどが割かれているそれの上位に、S級ヒーロー達は載っていた。ついでに、やはりA級からC級に比べると、写真の枠が大きい。キングが載っていて妙な心地になったが、その少し上にこの間の侍が載っていた。別にキングの言葉を疑っていたわけではないが、本当にヒーローだったのかと、名前は半ば感心したような思いで写真を見ていた。キングの少し下のS級8位のヒーローに何故だか見覚えがある気がしたが結局思い出せず、そのままページを捲り、A級の方にも目を向けた。やはり此方にも、この間のお節介焼きが載っている。
 しかし、名前がコンビニアルバイト一時間分の給料を注ぎ込んだのは、ちょんまげ師弟が理由ではなかった。


 キングは不思議そうに名前を眺めていた。名前が週刊誌を読んでいる。立ち読みではなく、わざわざ購入して。表紙はA級1位のヒーロー、アマイマスクであって、ルフィでもナルトでもない。ゲーム誌でも漫画誌でもないものを読む名前は珍しかったが、やがてキングはあっと気付いた。
「ちょ、名前氏、それ、」
「ん? あー、さっき本屋行ったついでに買ってきた。キング氏無愛想すぎじゃない? これ」
 ぷぷぷと笑いながら、開いていたページを見せてやれば、キングがわあああと叫んで赤面した。見出しには「独占インタビュー! 地上最強の男!」と書かれている。
「それは……緊張してて……」
「ふうん。――今一番望んでいることは、俺を楽しませてくれる逸材が現れること、か……」
「お願いほんとやめて」

 多分、逸材と書いてゲームと読むのだろうな。
 名前のすぐ側で身悶えしているゲーマーと、渋面でインタビューに答えている最強ヒーローは、どちらが本当のキングなのだろうか。やがて名前は週刊ヒーローをぽいっと放り投げ、隣人をスマブラに誘った。どちらにしろキングには変わりないのだ。そして、照れ隠しか何だか知らないが、名前のサムスはぼこぼこにされた。

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