画面に広がる俺の嫁。こういう学園内で恋愛する系のゲームは、必ず一人白衣のキャラが居る。校医か、理科教師か。今回は後者だった。私はそんな白衣の彼にメロメロなのである。
 プレイヤーに向かって愛を囁いている二次元の教師を、男女二人で観賞している。妙な図だが、名前とキングの間では日常的に行われていた。逆も然りで、名前がキングのプレイするギャルゲーを眺めている時もある。ついでにキングは妹萌えだ。
「この悩ましげな表情がたまりませんなあ!」
「白衣着てる先生なんて実際居ないけどね」
「え、そうなの?」
 振り向いて問い掛けると、キングは驚いたような顔をして名前を見詰め返した。
「理科で実験してる時は別だけども、日常的に白衣着てる人なんて居ないよ」
「そうなのか。まああれじゃん、簡単に差別化できるし、それに何より白衣萌えも一定数いるわけで。私のように」
「名前氏が白衣萌えなのは知ってるけど、この人金髪じゃん」
「え?」
「え?」

 どうやらキングは、私が金髪キャラが嫌いだと思っていたらしい。何故そう思ったのかは知らないが、それは間違いだ。別に金髪は好きでも嫌いでもない。ただ、黒髪が好きだというだけであって。
「私が金髪嫌いだったら、今頃キング氏は追い出されてるよ」
 そう言ってハハハと笑い、名前は液晶に向き直る。その背後でキングが複雑な表情をしていることにも気付かずに。

「ハァー……白衣萌え……」
「名前氏病院行って来たら。色んな意味で」
「病院が逃げ出すんじゃないかな」
「確かに」
 病院か、病院も良いよな。お医者さんという肩書から既に萌えワードだ。
 名前は今まで病院に世話になったことがなかったので、想像されるのは白衣のイケメンや美人のナース達ばかりだった。これからも行くことはないだろう。ついでに、学校にだって通ったことはない。

 そういえば、とキングが呟いた。
「いっつも主人公の名前、32ってつけてるけど、何の数字? 誕生日?」
「んん? ああ……サンプル32号だったから」
 訳が分からないと眉を寄せるキングに、名前は一人笑った。

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