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simple is the best!


::ZBK主とキング2

 珍しいこともあるものだと、茹で上がった素麺を片手に○は頬をかく。やけに静かだと思っていたら、先ほどまでゲームをしていた筈のキングが、いつの間にかコントローラーを握り締めたまま寝入っていた。
 ○は少し考えた後、静かに近寄ることにした。すぐ傍らまで来ても、彼が目を覚ますことはなかった。全クリ目指して耐久プレイを行っていた彼だが、漸くリタイアらしい。画面がステージ選択で固まっているのは流石だと言わざるを得ない。○は迷った後、テレビの音量を少し下げた。
 辺りが静かになると、キングが寝息を立てていることに気が付く。どうやら本格的に眠っているようだ。まあ、四十時間近くぶっ続けでプレイしていたのだから無理はない。○は握られたままのコントローラーを離してやり、特に何をするでもなくキングを見つめた。
 ○がキングの前で眠ることはあっても、キングが○の前で眠るのは珍しい。

 ぐっすりと眠っているらしいキングは、随分とあどけない寝顔を晒していた。口は半開きだし、いつもの威圧感がまるで無い。これならS級ヒーローのキングだと言われても解るまい。
 この人、寝るんだなあ。当たり前のことだったが、しみじみと思う。


 正直自分が近寄ったことで起きるかと思ったのだが、彼はまったく目を覚ます気配がなかった。体勢が辛そうだし、ベッドに運んでやれたら良いのだが、190近い巨漢を起こすことなく移動させられる自信は○には無い。考えた末、背中に毛布をかけてやるだけに留めた。毛布を羽織らせてやっても、キングは起きなかった。
「……額に肉か、頬に三本線か……」
 ○の小さな独り言に突っ込む声はなく、早く起きないかなあと少し思った。
 

2013.10.13 (Sun) 12:32
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