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simple is the best!


::ZBK主とキング

 彼女のことが好きか嫌いかと問われれば、キングは好きだと答えるだろう。
 キングにとって一番の親友は彼女だったし、異性で最も親しい友達も彼女だった。好きかと問われれば−−イエスと、答えざるを得ない。

 キングの傍らで○が眠っている。この人は俺のことを、男と思っていないのかもしれない。すうすうと寝息を立てている○の薄い腹が、リズミカルに上へ下への反復運動を繰り返している。
 キングは横目でその様子を眺めていたが、やがて体ごと彼女の方へと向き直る。
 信用されているのだと。そう思えば、この状況はある種の美談となったかもしれなかった。キングは決して、信用に足る男ではない。


「何を考えているの?」
 己にしなだれかかる○は、常と違い艶めかしい表情を浮かべている。熱にうかされているようなその顔は、○らしくなく、それでいて○以外の何者でもなかった。
「何も」キングは答えた。伸ばしかけた手は既に引っ込んでいた。「なんにも」

「ウソつき」
 そう言って薄く笑った想像上の○は、○にタオルケットをかけてやることで完全に消え去った。

 キングは、恐らく○のことを好いていた。好きか嫌いかと問われれば、間違いなく好きだと答えるほどには。そして同時に、信用に足る男ではなかった。
 すやすやと眠り続ける○を眺めながら、キングは大きな溜息を吐き出した。
 

2013.09.27 (Fri) 01:54
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