memo simple is the best! ::円転主の昔の話 怪人になってから暫くが経った。人間の時と見た目に違う所はそう無い。ただ一つ、殺戮衝動があるだけだ。 不思議なことに、何人殺そうと、少しも罪悪感が湧かない。 ずっぽりと手を抜けば、人間だったそれは力なく落ちていく。○は腕を振りながら、ふと後ろを振り向いた。 「お前は強いな」 気味の悪いぶくぶく太った一つ目の怪人が、そこには立っていた。どうやら、先の言葉はこの怪人らしい。しかし気配を感じなかった。今も尚。 一瞬の後に、○は気が付いた。どうやらこれは偽者らしい。本体はもっと下だ。○は怪人の足元へと視線を走らせたが、怪人は気が付かなかったようだ。 「見事なものだ」 「……ドーモ」 ○の返事に怪人は薄く笑い、それから言った。「私の名はサイコス」 「お前のその力、もっと他の場所で役立てないか?」 サイコスと名乗ったその怪人は言った。自分はある組織を作っているのだと。怪人の怪人による怪人のための世界を作ることを目標としている団体。名を、怪人協会。 ○はサイコスが話すのを聞きながら、サイコスを殺す場合の勝算を考えていた。サイコスがその重量級の身体でありながら軽々と動けるのは、何らかの力が働いているからだろう。そして本体は別にある。○の特技が超速再生であることもバレているのかどうか。 「怪人が組織立って動くなんて、知らなかったっすね」 「そうだろうな。恐らく、初めての試みなんじゃないか?」 ○の言葉に、サイコスは気を良くしたらしかった。 良いっすよと言えば、やけにあっさりだなと呟かれた。 「へぇ、他にも居るんすか、賛同者が。で、説得には骨が折れたと」 「ああ。半殺しの目に遭って、漸く頷いた輩も居るな」 「それはそれは」 ○が笑えば、サイコスも笑みを浮かべたようだった。 「お前は何故協力する気になった?」 「ノリで。団体行動も楽しいかもって、思っただけすよ」 「快楽主義だな」サイコスは笑う。「歓迎するぞ」 ヒーロー協会のパクりっすかと尋ねれば、頭を殴られた。図星だったのか。 back ×
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