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::水族館主と調教師組と外気温

 今夏の暑さはここ数年で一番の暑さだと聞く。某所では気温が四十度を超えたとか超えなかったとか。信じられない。涼しさを求めてか、丑三ッ時水族館は連日大入り満員だ。○は飼育員として働く傍ら、唯一の人間スタッフとしても多忙を極めていた。
 滲んでくる汗を制服で拭いながら、○はショーステージへ向かう。屋外に設けられている為、正直なところあまり行きたくはないのだが、致し方ない。

 ショーの特大プールの裏側では、出番を待つイルカ達が泳いでいた。心なしか、いつもより元気がなさそうに見えた。後でコンディションを聞いておこう。本当に夏バテだったら、館長に一言言わなければならない。
 客側から見えないよう歩を進めながら、○は一角達の姿を探した。居た。
「ひっ」
 日陰で一角とデビがのびていた。

「い、一角さん! 一角さん! 大丈夫ですか!? 一角さん! デビさんも大丈夫ですか!?」
 最悪の可能性が脳裏を過る。が、
「おおお、俺は二の次次か」
 デビが呻くように言った。良かった、死んではいないようだ。
 一角がゆっくりと身を起こした。しかし途中で力尽き、そのまま元の体勢に戻る。
「はは……し心配無用だよ○殿……しょ、少々暑さにやられただけで……暫く休めばよくなるから……」
「デビさんじゃないんですからどもらないで下さいよおお!」
 そのデビはデビで暑さに参っているらしく、「茹でダコになりそう……」とへらへら笑っていた。


 館長室へ走った○は、ショー公演の時間帯の変更と、回数の削減を頼み込んだ。館長は了承してくれた。コートを着込んでいる彼は、暑さで頭をやられたんだと思わざるを得ない。
 

2013.08.16 (Fri) 23:44
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