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::メンドー主とチャンピオン、シンオウ編

「可愛らしいタブンネね」
 シロナがそう声を掛けたのは、別段特別な意味があったからではなかった。言葉通り、そのタブンネを可愛いと思ったからに他ならない。

 タブンネはとても可愛かった。もっとも、シンオウではなかなか目にしなかったから、物珍しさもあったのかもしれない。くりくりとした丸い目は愛らしく、自分が悪意に曝されるかもしれないなどとは考えていない――いや、考えにすら至らないとでも言うような、無垢な目をしていた。毛並みは艶やかで、大事にされているのが解る。
 休暇中とはいえシロナはシンオウリーグチャンピオンである以前に一人のポケモントレーナーだった。タブンネの姿はこれまでに何度も見ている。しかしこれほどまでに可愛がられたタブンネはなかなかお目に掛かれないのではないか。本職の育て屋かもしれない、シロナはそこまで考えた。

 タブンネのトレーナーだろう男は、言葉少なに「どうも」と言った。
 浜辺に座り込んでいる彼の視線の先には、シロナも会った覚えのある少年少女達が、年相応にサザナミビーチで遊んでいた。あの子達の知り合いなのだろうか。それならば、凄腕の育て屋であっても納得がいく。
 トレーナーの隣に佇んでいたタブンネは、シロナが手を伸ばしても拒むことなくそれを受け入れた。タブンネの毛並みはやはり美しく、シロナはそっと微笑んだ。くすぐったそうにタブンネが目を細める。トレーナーの方も嫌がっている風ではなかった。
 

2013.08.12 (Mon) 23:50
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