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::メンドー主とチャンピオン、ホウエン編

 チェレンは○という男のことを、ろくでもないニートで、どうしようもないクズだと思っている。さっさとベルに捨てられれば良い。実際はベルの方こそ○に首っ丈なのだが、それはそれ、これはこれだ。しかし反面、ポケモントレーナーとしては尊敬しているのだ。チェレンの知るトレーナーの中で、信じ難いことだが彼こそが理想的なポケモントレーナーだったし、実際学ぶ所も多い。
 冗談でしょうと言えば、○は肩をすくめてみせた。普段が普段だから、そんな所作がいやにむかつく。

 ○はホウエンのチャンピオンが誰なのか、知らないという。
 再三言ったように、不本意ながら、○という男はチェレンの理想のトレーナー像を具現化したような存在だった。バトル時においての彼の一挙一動は、彼が強さだけを追い求めてきたことを如実に表していた。ストイックに、がむしゃらに。それなのに、彼は他の地方のチャンピオンが誰なのかを知らないという。
「俺、生まれはジョウトだけどカントーの育ちだし、ジョウトのことはかろうじて知ってるが、他地方のことなんて知らないよ」と、煩わしげに○は口にした。

「普通、チャンピオンが誰かくらい、ポケモントレーナーなら知ってる筈でしょ」
「君の普通と俺の普通が同じだと、思わない方がいいだろうね」○はそう言ってから付け足した。「それに俺は普通でありたいとも思わない」
 彼がチェレンの相手を面倒に思っているのは明らかだった。時間なんていくらでもあるくせして、うやむやにしようとしている。チェレンだって別に、○がホウエンやシンオウ、果てはイッシュのチャンピオンすら知らないとしてもどうでも良いのだ。ただ、こんな大人になりたくないと思う一心で、彼に尋ねる。「本当に知らないんですか? ホウエンのチャンピオンを?」
「知らないね」
 詳しく答えた方がチェレンの興味を無くさせられる、そう思ったようだった。「俺は今までにバッジ七つしか取っていないし、ジョウトのチャンピオンとは個人的に付き合いもあるけど、他地方のチャンピオンのことなんて知らないね。知りたいとも思わない」
 色々と突っ込みたいことはあった。しかしチェレンは彼の言葉に対しては何も言わなかった。

「今のホウエンチャンピオンはミクリさんといって、ルネジムのリーダーだった方です」
 チェレンが説明すれば、○は水タイプは好かないと言っただけだった。何でも、大半が氷タイプの技を覚えるからだとか。その前のチャンピオンのことにも触れたが、使用タイプにこだわりがあるのは良いと言った。自分はタブンネにガラガラと脈絡ないポケモンを連れているくせにと指摘すれば、タブンネはバトル要員じゃないと的外れな返事を返された。○がホウエンのチャンピオンについて知らなかったのは、どうやら本当らしい。
 

2013.08.11 (Sun) 22:13
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