memo simple is the best! ::水族館主と一角と給餌 ショーの練習を見学していたところ、私の発する何かを感じたのか、それとも単にサボりたかったのか、デビさんが「やってみるか」と声を掛けてくれた。 変身していない時は皆普通の動物で、イルカ達は見慣れない筈の私が差し出したイワシも、ぺろりとたいらげてくれた。イルカを担当したことはなかったので、少し新鮮だ。 「っ……! ○殿!」 「はぁい?」 可愛らしいイルカ達に見詰められながら、生返事を返す。一角さんの声がいつもより切羽詰まっているような音をしていたことには気付かなかった。「私にもくれたまえよ!」 「ハ、ハァ?」 ついでに言っておくと、この「ハァ?」はデビさんだ。 「一角さんお腹空いてるんですか? 昼食、ちゃんととられました?」 「無論だ!」見上げた先の一角さんは、いつもと何ら変わりない顔をしていた。もっとも、この人の表情は読みづらいが。「しかし、○殿から与えられてはいない!」 「はい?」 「い一角、な何言っててんのお前?」 一角さんはデビさんの問いかけに、「私は真面目に言っているのだ!」と叫び返すだけだった。よく解らないが、つまりは小腹が空いたということだろうか? 一角の意図を理解しないまま、「取り敢えず屈んでください」と声を掛けた。元の姿ならともかく、変身したままでは手が届かない。背後のデビさんが、「お前はい一角にあ甘過ぎぎ……」と呆れたように呟いた。確かに私は、イッカクを特別視している節があるかもしれない。愛は平等に注がなければ。 ひざまづき、どこか期待顔で此方を見る一角の顔を眺めながら、私はそう決心した。 イワシを飲み込んだ一角さんはひどくご満悦だった。そんなに空腹だったのかこの人。 back ×
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