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::水族館主とドーラクとメール

「お疲れ、飼育員サン」
「あれ、ドーラクさん。お疲れ様です。珍しいですね、こちらの方へ来るの」
「まーな。ところで頼みたいことがあるんだがよ、ギシギシ」
「はい、何でしょう」
「メールの出し方、教えてくんねーかな」


「お問い合わせか何かですか?」
「まあそんなとこだ。で、これなんだが……」
「ヤツドキサーカス? サーカスに何かあるんですか?」
「まあな。――連絡先は書いてあるんだが、どうやったらいいのか解らなくてよ。メール? とかいうのだけは解るんだが」
「ああ、これはメールアドレスですよ。これが送り先になってて――まあその辺りのことはいいですよね。ドーラクさん、メルアド持ってますか?」
「持ってねえ」
「だったらアドレスの取得から始めましょうか。適当なフリメでいいですよね」
「おう。わかんねーし」
「じゃ、これで。アカウントを取得したら、ドーラクさん専用のメルアドが手に入るんですよ」
「へェ」
「入会法……あったあった。ここにドーラクさんの個人情報を登録するわけです」
「コジンジョウホウ?」
「住所とか氏名、年齢に、生年月……」
「……」
「……」
「えー、と……」
「……個人情報、ねえ……」
「ドーラクさん、このサーカスに問い合わせるだけなら、私のアドレスお貸ししましょうか」
「おっ? そんな事もできんのかよ」
「はい」
「じゃあ頼むわ」
「了解です」

「――送り先のアドレスをコピペして、と。で、ここに本文を打つわけです」
「ほうほう」
「あ、題名も――ここの所ですね――入れておいた方がいいですよ」
「おー、サンキュー」
「(蟹がメール打ってる……)」
「ん? 飼育員サン、これ日本語打てねェの?」
「え、いいえ、これローマ字入力で……ドーラクさん、ローマ字での日本語書けます?」
「ローマジ?」
「あー……じゃあもう平仮名入力にしておきますね。これをこうして……はい、これで大丈夫だと思いますよ。キーボードに書いてある平仮名をそのまま打ったら大丈夫です」
「おおほんとだ! ありがとよ、ギシギシ」
「どういたしまして」

「……」
「……」ポチ、ポチ…
「……」
「……」ポチ、ポチ…
「……」
「飼育員サン、これ、片仮名――」
「一番下の、横長いキーがあるじゃないですか」
「一番下……横長……」
「で、何度か押せば、変換の候補がいくつか出てきますよ」
「お……おっ、おー! すげぇ! ありがとーよ」
「いえいえ」
「……」ポチ、ポチ…
「……」
「……」ポチ、ポチ…
「(先は長そうだな……)」
「飼育員サン、これ――」
「文字を決定する時は、その右端の一番大きなキーです」
「おー」
 

2013.06.21 (Fri) 11:02
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